2022.10.20

弱体化するインド野党

 インド最大野党の国民会議派は19日、党首選の結果として国民会議派を私物化していた「ネルー・ガンディー一族」に属さない人物、マリカルジュン・カルゲを選んだ。上院議員を長年務め、大臣経験者であるカルゲは既に80歳だ。有効投票数の84.1%を獲得、対戦相手で国連事務次長も務めた論客サシ・タロール(66歳)の11.4%を問題なく退けた。

 この結果が何を意味しているかは明白で、ネルー・ガンディー一族による国民会議派の支配継続だ。カルゲを選んだのは前国民会議派総裁のソニア・ガンディーであり、同派が政権を担っていた時(2004年5月~2014年5月)と同じ状況が、過去の記憶から蘇ってきた。

 2004年の総選挙で国民会議派が勝つと、ネルー・ガンディー家の後継者であった故ラジブ・ガンディーの妻、イタリア生まれのソニア・ガンディーの首相就任が当然視されたが、彼女は「天の声が聞こえた」として首相就任を拒否、その代わりにテクノクラートでガンディー家に忠実なマンモハン・シンを指名、彼を首相の座につけた。

 その際ソニアがマンモハン・シンに言った言葉が、「権力者は一人ですよ。それが分かった上なら首相にしてあげます」ということだったと、シン首相の報道官になったサンジャイ・バルーが彼の著書(The Accidental Prime Ministerおこぼれ首相-島田訳)で暴露している。何ということはない、歴史の繰り返しだ。表向き公明正大な党首選を行ったように見せているが、出来レース、八百長である。その裏でどれだけの金が動いたかは言うまでもないだろう。これで老朽化し、見る影もなくなった国民会議派の再生は見果てぬ夢となった。

 この結果を一番喜んでいるのは、与党インド人民党(BJP)のモディ現首相(72歳)だろう。2024年5月に2期目の任期終了を迎えるが、インドでは首相継続期間の規定がないことから、このままならモディが74歳で迎える総選挙と総裁選での勝利に死角は見当たらない。(了) 

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