2024.01.16

インドの陰と陽

 モディ首相がグジャラート州首相であったときに始めた投資大会(Vibrant Gujarat)が今年も1月10日から3日間、グジャラート州都のガンディナガールで開催され、モディ首相も出席し「インドは数年以内(自分の首相任期中)にドイツと日本を抜いて世界第3位の経済大国になる。また世界はインドを世界秩序安定の重要な支柱であり、信頼できる世界の友としてみている」と発言した。

 確かに、ピラミッド型に分布する人口は9億人にもなる世界最大の生産年齢人口を有し、少子高齢化が進む先進国や中国と比較しても絶対的に有利だ。だがそれも、それらの人達が就労機会を得て購買力が向上し消費が拡大、経済成長に繋がれば、の話だ。

 インド準備銀行(中央銀行)の元総裁レディ氏は在任中(2003-2008)に「インドは今後長きにわたり人口配当(Demographic Dividend)を享受できるとばかり喜んではいられない。その人口に必要な雇用が創出できなかったら、人口配当が人口悪夢(Demographic Nightmare)に変わる」と忠告している。その経済成長だが、米シカゴ大学教授からインドに呼び戻されてインド準備銀行総裁(2013-2016)を務めたラグラム・ラジャン現シカゴ大学教授は2023年11月10日、中国北京で開催された経済フォーラムにビデヲ出演し「インドが人口配当を享受するためには雇用創出が必要で、そのためには8-8.5%の経済成長が求められる。先月10月のインド失業率はこの2年で最も高い10.05%を記録している。現行の6-6.6%の経済成長は他国に比べて高いかも知れないが、毎年何百万人もの就労人口が生まれてくるインドでは低すぎる」と語った。

 モディの発言に対しインド有力紙Economic Times(1/10)には下記のようなコメントも寄せられた。「大衆向け大宣伝だが、現実との乖離が激しい。高い失業率や酷税。グジャラートに血税を投入、これ見よがしの成果を誇るが、その陰で苦しんでいる人がどれだけいるか」。正にインドの陰と陽に言及したコメントだ。それに加え、世界最大と言われるインドの民主主義だが、モディ首相率いるインド人民党(BJP)が14年に政権を握って以来ヒンドゥー至上主義を掲げ、イスラム教徒など少数派やメディア、社会活動家等への攻撃が強まっている。2023年の秋から暮れにかけて、カナダや米国でもインドからの分離独立運動を展開するシーク教の指導者殺害や、暗殺未遂が起こっている。カナダ首相は「インド政府が潜在的に関与した」との見解を示し、米ホワイトハウスは声明で「最高レベルの直接対話でインド政府に懸念を表明した」と明かしている。スウェーデンのV-Dem研究所の2023年報告書(Democracy Report 2023)では、インドを「過去10年間で、最も専制主義化した国の一つ」に挙げており、同国内での民主主義の後退が懸念されている。国際外交でも、ロシアとの戦略的パートナーシップ関係の確立を掲げ、中国主導の上海協力機構に加盟しつつも日米豪印の戦略対話(クワッド)にも参加、利害が相反し、混迷を極める世界情勢の中にあって、その立ち位置が明確にならない、否しない。

 グローバルサウスの盟主として、またIT立国の経済拡大が著しい国の首相(今や国家元首?)として、国際政治や国内経済界にその名を轟かせるモディだが、その映像に映し出されず、もだえ苦しむ弱者がどれだけいるかも、心にとめておきたい。

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