2022.02.27

モディ首相の四面楚歌

 ロシアのプーチン大統領が常軌を逸した行動をとっている、ように私には思える。旧ソビエト連邦の復活を夢見ているのか。それとも、プーチンと昵懇なウクライナのオリガルヒ(新興財閥)に大統領にしてもらったにもかかわらず、米国大統領が共和党のトランプから民主党のバイデンに変わったとたん、手のひらを反すように彼らに制裁を加えた元コメディアンのゼレンスキー・ウクライナ大統領憎しなのか、真意の程は知る由もないが、狂気錯乱じみた行動も冷静な計算に立脚したものなのだろうか。

 この局面に際し、モディは相当困っているに違いない。25日に行われた国連安保理の非難決議案の採決には中国とアラブ首長国連邦(UAE)と共に棄権した。インドはロシアからの武器輸入に大きく依存しており、昨年12月にはプーチンがインドを訪問、10年間の軍事協力を締結している。中国との国境紛争が続く中、インドは今回の北京冬季五輪への「外交ボイコット」を実施しており、中国が肩入れするパキスタンとの間でも一触即発の状況で、ロシアも敵に回したら、それこそ四面楚歌だ。

 モディは、ウクライナのゼレンスキー大統領から26日に電話をもらい「平和的解決」への協力を要請されたが、「暴力の即刻停止が望ましい」と述べるにとどめ、プーチン非難はおくびにも出していない。クワッド(日米豪印戦略対話)に参加しているといっても、対中国やロシアで忙しい米国や豪州が率先してインドの戦略的防波堤になってくれることなど思いのほかだ。いわんや日本においてをやだ。

 かてて加えてコロナで傷んだ経済の立て直しは待ったなしだ。シタラマン財務相は2月1日、議会で来年度予算案を発表「引き続き、成長を刺激する」との姿勢を示したが、インフレの高進と金利高が重なるとそれどころではなくなる。

 また国会ではインド政府がイスラエルの監視ソフト(スパイウエア、ペガサスPegasus)を購入し、主要な政敵やジャーナリストへの監視を強めていると糾弾され、説明に四苦八苦している。因みに英調査会社のコンパリテックの調査では、驚くなかれ、世界の主要都市1平方マイル(約2.58平方キロメートル)あたりの監視カメラ数が最も多いのはインドのデリー首都圏(1,826台)とのことだ。

 増大する若者人口の求職難や社会インフラの遅れ(注)、世界最悪の環境汚染やモディの右傾化。モディの豪語する将来の経済大国インドは欠陥だらけだ。外交での得点稼ぎが重要でないとは言わないが、内政面への注力に意を用いないと、2年後に迫った総選挙が危ういものになりかねない。(注)1月30日のAFP=時事は、インドの首都ニューデリーが異例の厳しい寒さに見舞われ、今年に入って176人のホームレスが寒さにより死亡していると報じている。(了) 

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