2024.06.07

モディ惨敗の背景、その意味するところ

 モディ首相率いるインド人民党(BJP)が400議席の大台(総議席数は543)にでも乗るのでは、と4月から6月の長期間にわたり行われた今回のインド総選挙結果を想定する向きもあったほど、BJPの楽勝が予想されていた。しかし結果は予想を大幅に覆し、BJPは獲得議席を前回より63議席も大幅に減らし240議席と、単独過半数(272議席)割れの惨状であった。

 BJPの支持母体であるRSS(ヒンドゥー至上主義民族義勇団)出身のモディは、人口の約8割を占めるヒンドゥー教徒を固めさえすれば(イスラム教徒など相手にしなくても-粗末に扱おうが)今回の選挙も圧勝と高をくくっていたのではないか。正にそこにこそ落とし穴があったのだ。

 新参者はいざ知らず、古くからイスラム教徒と(平和に)暮らしてきたヒンドゥー教徒が、ヒンドゥー至上主義を掲げ強権を振るい政治的権力掌握に励み、弱者(イスラム教徒や貧困層)の救済をおろそかにする指導者は、必ずしも真の指導者足り得ない、との感情を抱いても不思議ではない。彼らにとって、モディが如何に外交で得点を稼ごうか、日常生活への影響は軽微で、職場探しもままならない。そういったヒンドゥー教徒が身近な問題をベースに判断した場合、モディに対する批判票を投じる可能性は大いにあったと言える。

 現政権関連(癒着)財閥等により乗っ取られたメディアに属する人達には、上記事情など報道する勇気も気概も失せて、現政権をヨイショするだけだった。(泡沫候補であった)トランプが(上級国民からヨイショされ、危機感に欠けていたクリントン女史を破り)よもやの大統領職を射止めた時と似ている。

 モディは世界最大の民主国家と誇っているが、その民主国家を民主国家とは言えないものにする可能性のある政治家がモディその人でもあるのだ。

 インドの一面を皮相的に見ただけで「インドは・・・」というのは、そこで既にボタンの掛け間違えを起こしており大変危険だ。そこに暮らす底辺の人達が教条的宗教闘争に巻き込まれるのは世の常だが、そのことに心血を注ぐ政治屋たちは人でもあり、また人でもない。その為に苦しんでいる多くの弱者に対する救済がどう進んでいくのか、可なりの紆余曲折が待っていよう。

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