2021.11.22
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モディの威信低下
モディは11月19日、約1年前に法制化した農業新法を廃止すると表明した。特定農産物の公定価格買い上げ制度を廃止し、自由な市場取引に委ねようとする政策そのものは、ソ連から模倣した社会主義的統制経済からの解放を目指すうえで真っ当なものだ。
しかし、既得権を奪われるとの恐怖からか、それでなくとも貧しい農民は同新法に反対するため40以上の農業組合が集結し創設したSKM(統一農民戦線)の下に、徹底した非暴力抵抗を1年もの間継続した。コロナ対策に失敗し、予想以上の経済停滞を招いたモディの威信低下は思った以上に大きかったようだ。今や独裁者のごとき感を与えるモディをもってしても、与党BJP(インド人民党)が被るかもしれない州議会選挙での打撃を考えると、意地を張り続けるわけにはいかなかったようだ。SKM抵抗の中心となったパンジャブ州やウッタルプラデッシュ州では来年州議会選挙が予定されている。このままでは与党の地位を奪われかねない。特にパンジャブ州では農民を代表する一族から食品加工省大臣を指名し、農民票の取り込みを行ったが、同大臣は農業新法成立に反対し辞任している。
国営企業の民営化や旧態依然とした法律の改定は必須だが「俺が言うのだから従え」的な言動による社会変革には限界のあることがはっきりした。
2019年に地滑り的勝利で二期目を勝ち取ったモディだが、そのカリスマ性に陰りが見えてきたことは否めない。幸いにも、最大野党国民会議派の体たらくに助けられBJPの目指す極右(ヒンドゥー至上主義)施政の継続が可能となっているが、それがインドの悲劇を生まないか、懸念される。(了)