2023.01.17

インド人的思考回路

 在日インド大使館の筆頭公使として日本にも駐在したことのある印ジャイシャンカール外務大臣は20年に発刊した著書の「はじめ」に、インドの詩人ティルヴァッルヴァルの言を引いて「知恵とは、変化する世界のありように適応していくことである」と記している。

 そして今月6日に配信された日経電子版には「世界の矛盾、インドの国益」というジャイシャンカール外務大臣の単独インタビュー記事が掲載された。そこでジャイシャンカール氏は「インドはグローバルな矛盾から生まれる機会を見つけ、それを利用することで国益を追求している。(国家間の)競争とそれに伴う矛盾から機会が生まれるのは我々にとって良いことである。我々はその機会を使う。使っていかなければならない。」とも言っている。

 インド人の思考回路を如実に表しているもので、インド人と付き合う、インドでビジネスを行う時に、その辺の理解を「事の良し悪しは別にして」進めていく必要がある。

 インドは自国で使う原油の8割以上を輸入に依存しており、(貿易赤字に繋がる)対外支払いはインドの国家予算(約50兆円)の3割近くの額に相当する。したがって、少しでも安い原油の輸入が好ましく、ロシア原油の輸出先が限られ相当の値引きが可能になると、従来からの主要調達先であるイラクやサウジアラビヤに代え、ロシア産の輸入を最優先しており、今では最大の調達先になっている。

 同様にインドは、ジェネリック医薬品の原材料であるAPI(Active Pharmaceutical Ingredient) やリチウムイオンバッテリー用セルの多くを中国に依存している。したがって、国益に叶うものを持つ国とは(他国が「良心に恥じないのか」と言おうが)是々非々で付き合い、その他に関しは知恵を使い、国際世論に適応しつつ自国の利害を優先し対応していく、という考え方だ。

 インド市場攻略を考えるときには、日本人の感性や習慣を基にするのではなく、上述したことをわきまえてインドやインド人と付き合わないと、常に「何故?」という疑問に付きまとわれ求めるビジネスは進められない、ということを念頭に置いておく必要がある。 (了) 

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