2021.09.10

お約束の繰り返しでは、貧民は救われない

第75回インド独立記念日の8月15日、モディ首相は90分かけて「誰も取り残さない発展」を約束した。そして、インドは若者国家であり、彼らはなんでも成し得る「万能世代」だとも持ち上げた。しかし、現地紙THE HINDUの論調は「19年と20年の約束を繰り返しているだけ」と手厳しい。
インド経済モニタリングセンターが9月9日に発表した8月の失業率は8.3%と依然高い水準だ。同月に190万人が職を失ったという。特に農業関連の失業が大きい。コロナ禍により製造業が振るわず、それが消費の停滞を招いている。気候変動の影響で零細農家の収入も不安定だ。それ以前に不衛生で非効率な農業の改善が遅々として進まないのが心配だ。
モディは「零細農家をインドが誇るものにする」というが、保有農地2万平米以下の零細農家が全体の約80%を占める現状をどうして誇れるものにできるのかは依然謎だ。
その一方で、連日インド株は最高値圏で推移している。コロナ禍で落ち込んだ経済の回復を期待してのものだろうが、日々の食事にも事欠く農家の人たちにとっては別世界の出来事。
2014年6月、多くの国民の期待を一身に担い首相の座についたモディだが、7年たった今でも「お約束事」で潤うのは特定の人たちのみ、であったら「ネルー・ガンディー王朝からの決別と、新生インド国家構築のための政権交代」はなんであったのか、多くの人の疑問に対する答えはまだ示されていない。(了)

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