八方美人の今後
モディ首相は過去2回総選挙に勝ち首相の座を維持している。国会解散をする理由は見当たらないので、次回総選挙は2024年5月頃になる。おそらく現下の情勢では政権の揺らぐことは無く、余程想定外のことでも起きない限り、モディの首相3選はまず間違いないだろう。それがインド国民にとって良いことなのかどうかの判断をするには、今後の政治方針の実行推移を見る必要がある。
そのインド首相にとって、まもなく世界最大の人口を抱え、毎年2千万人もが成人し、拡大する生産年齢人口問題、すなわち雇用問題にどう立ち向かうのかが喫緊の課題である。その一方で、ロシアのウクライナ進行に始まる世界政治の流動化への対応も、そう簡単なものとは思われない。
モディ首相は”Make in India”を標榜、生産活動における自立を目指しているが、道半ばだ。そのため外資の誘致を図るが、その一方で、自国企業優先を推し進めるやり方では自家撞着に陥る。外資の利権を保護しつつ、いかにしてその技術と関連人材育成を進めるかの明確な政治指針は見えてこない。
国際政治においては、中立的立場を貫き、中ロと欧米を天秤にかけ、自国利益の極大化を図っている。両陣営ともそういったインドの八方美人的対応は不愉快だろうが、インドを敵側に付けることは得策ではなく、自国の損得を考えて事に当たっている。今やインドがロシア原油の最大輸入国となっている。一方、アップルなどは中国での生産のインド移転を計画している。いかにしてエネルギーの他国依存を減少し、外資による大型製造業を根付かせるか。
遅かれ早かれ、掲げる旗の色の明確化を迫られるのは避けて通れないだろう。そして、貧困問題の解決もそう容易ではない。1年半後に迫った3選への道に立ちふさがる大きな壁であり、それら難関をモディがどう処理していくのか。来年がその正念場になることは間違いない。(了)