インド人口男女比率逆転の意味
インドに関係しだした1990年代初めからずっとおかしいと思っていたことに男女比率があった。世界中のどの国を見ても総じて女性の方が男性より多いのが一般的だが、インドに限っては何故か男性数が女性のそれを上回ってきた。それが、11月24日に発表された全国家族健康調査(National Family Health Survey)によれば、1000人の男性に対し女性が1020人になっている。前回調査(2015-16)では1000人の男性に対し女性は991人だった。
逆転の主な理由を女性の方が男性より平均寿命が長いからだとしているが、5年間でそんな大逆転が起こるわけがない。不正確であった調査結果を多少ましにしただけではないか。
貧困家庭では働き手として期待できる男児を好み、違法行為となる産み分けに悪徳医者が加担する。未就学から働き出し、就学もままならない子供たちもいる。
モディ首相が如何にインドはデジタル立国と声を大にして叫び、一人も取り残さない経済発展(inclusive growth)を目指すと言ってみたところで、現実は貧富差が拡大し、毎年生産年齢人口(15歳以上65歳未満)に組み込まれてくる約2千万人もの若者、特に低学歴者に対する労働機会の創出は困難を極めている。“Make in India” と言っても、ジェネリックの原液 (AFI)やEVのリチウムイオン電池のセルを中国に依存している現状は “Assemble in India” であって、とてもモディ首相の目指す「自立したインド (Atmanirbhar Bharat, self-reliant India) には程遠い。
このままでは中所得国(1人当たりのGDPが3,000ドルから10,000ドル)の罠に嵌まるどころか、中所得国にさえなれないかもしれない(インドの1人当たりGDPは2020年約1,900ドル)。
2024年5月に予定される総選挙で3期目を目指すモディだが、これからの2年半は塗炭の苦しみを味わう期間になるかもしれない。 (了)