英語力でカーストと性差別を克服するインド女性
インドに根強く残るカースト制度。
インドの憲法上ではカーストは廃止されたことになってはいるが、どっこい未だに残っているのが実情だ。特に地方では、旧態依然とした風習が引き継がれており、そこから決別することは容易なことではない。しかし、そういった風習から脱却できないかというと、必ずしもそうではないようだ。
その辺のところを、The American Economic Reviewに掲載された分析をThe Times of India(2007年11月24日付)が紹介していた。例えば、インド最大の商業都市ムンバイがあるマハラシュトラ州を例に取ると、同州の言語であるマラティで教育を受けた若者はブルーカラーの職業に就くのが精一杯で、英語教育を受けた若者はホワイトカラー、それも専門職に就くことが可能になるというものである。ブルーカラーの職業は、紡績工場や造船所、または建設現場などの労働者といったところだ。女性が英語の能力を持つことで、職業のみならず結婚においても選択肢が広がるという。具体的には、マラティで教育を受けた女性で異カーストの男性と結婚するのは1割弱(9.7%)に過ぎないが、英語学習を受けた女性の約3割強(31.6%)が異カーストの男性と結婚しているという調査結果に見て取れる。
これから分かることはすごく明快で、特に女性がカーストや性差別からの脱却を望むならば英語を学べ、ということになる。英語能力を身に付けることで、国内のみならず、国際的な企業への就職機会も得られ、そこで出会う異カーストの男性との交流も可能になる。その辺のところは、インドのIT(情報通信)産業が飛躍的に伸びた要因を探してみれば、容易に分かる。米国企業からのアウトソーシングに不可欠なものが英語力だ。そして今や、インド企業は単なる下請け的なBPO(ビジネス・プロセスアウトソーシング:賃金格差や時間帯の違いを利用したコスト削減など)から、BTO(ビジネス・トランスフォーメーション・アウトソーシング)といわれる、先端的なビジネスプロセスの改革とアウトソーシングの融合による継続的な企業改革を担うまでになっている。ITのみならず、人事、経理や購買、そして物流など、グローバル展開を目指す企業にとって、いかに効率的な企業経営をするかが大きな課題となってきており、その際に力を発揮するのが、業務知識に裏打ちされた語学(英語)力である。
インドの女性は英語力でカーストと性差別を克服するということだが、これを言い換えて、アジア重視を打ち出している日本企業に当てはめて表現すると、アジアの人材(強いて言えばインドの人材)を適材適所で活用し、アジア全域に効率的なネットワークを構築するには、語学(英語)力が必要ということになろうか。
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