春一番とインド周辺国の国情
先週23日の土曜日、東京では午前中暖かい南風が吹き4月上旬並みの気温まで上がった。この風が例年より9日遅い春一番だったとのこと。午後になると、寒冷前線の南下で一挙に冬型の天気に変わり、強風が吹き荒れ、関東地方の鉄道のダイヤは相当乱れてしまった。土曜日なのに、夕方のターミナル駅は相当混雑していた。いつもの手順が一寸変わっただけなのに、かなり混乱してしまうのは、そういったことを想定せずに社会システムが構築されてしまう、先進国の弱点かもしれない。それでも、あと1週間くらいの天候不順を我慢すれば、一挙に春めいてくる。したがって、春の嵐も、強風による日常生活の混乱も、非常に困るものではあるが一時的なものである。
ところが、日常生活が混乱されながら、それが一過性のものでないのがインドを取り巻く周辺国の国情だ。1988年に35歳の若さでイスラム圏初の女性首相に就任したベナジル・ブット氏が昨年12月27日、54歳の若さで暗殺されたパキスタン。延期になっていた総選挙も18日、とりあえず終了。野党が勢力を拡大、下院の約2/3の議席数を獲得し野党連合で同意した、と多くの現地新聞が報じている。野党連合が最終的に2/3の議席を固めれば、大統領の弾劾が可能になる。ムシャラフ現大統領に国外追放された野党パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)を率いるシャリフ元首相は、ムシャラフ大統領の追い落としにかかる可能性も否定できない。そうなると、「目には目を」的な政治展開となり、国をまとめるどころか、混乱に陥れる可能性が出てくる。そういった国が核を保有しているわけで、隣国インドもうかうかしていられない。
目を北に転じると、印中に挟まったネパールも昨年12月、従来の立憲君主制(王政)から共和制への移行を決定している。旧反政府武装組織であるネパール共産党毛沢東主義(毛派)の台頭が起こした変革だ。これのインド版が豊富な石炭埋蔵量を誇るインド中央部諸州(オリッサ、ジャルカンドやチャティスガール)で警察署などを襲い、社会不安を起こしているナクサライト(極左武装組織)である。上記諸州の部族たちは先祖の土地を取り上げられ、生活苦を強いられており、ナクサライトへの勧誘標的となっている。このナクサライトとネパールの毛派が手を結ぶことになると、インド政府の手に終えなくなる危険性が出てくる。
次に東を見れば、国の体をなしていないバングラデッシュや、政府軍と1970年代に結成されたタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)が闘争を続けるスリランカがある。
どう見てもインド周辺国の国情には不安が付きまとう。上記諸国が加盟するSAARC(South Asian Association for Regional Cooperation,南アジア協力連合)の盟主たらんとするインドが今後、そういった隣国に対しどういった外交政策を展開していくのか。大国インドとして先進国入りを目指すのもよいが、と同時に、経済的に恵まれない隣国との共栄共存を念頭に入れた外交政策の展開も期待したい。
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