我が信じる道を行くインド人
デリーから郊外に向かっているときでした。とある交差点に差し掛かったとき、信号機が作動しておらず、かなりの混雑が生じていました。交差点での混乱はよくあることなので、大して気にも留めてはいなかったのですが、よく見ると一人の普通の中年男性が交通整理をしているではありませんか。交通巡査などではなく、また、別に誰に頼まれたわけでもなく、混乱する交差点で進入してくる車をさばいているのです。日本だったらまずそんなことは起こらないでしょうし、起こったとしても、何の資格も無い人がしゃしゃり出て、交通整理などはしないでしょう。ただ傍観し、文句や愚痴を言うのが一般的ではないでしょうか。恐らく、自主的に交通整理を始めたその男性は、どうしようもない事態の解決に自分の力が役に立つと思ったのでしょう。そう思ったとき、行動に出るのがインドの人の特性でしょうか。見る人が見たら、何を厚かましく、出しゃばったヤツだと思うかもしれません。でも、自分で納得の行く行為であり、それが人様のためになるのなら、特段他人の目を気にする必要も無いわけですよね。
他人の目を気にしないという点では、若い頃駐在していたアメリカもそうでした。真冬の寒いときに、毛皮のコートを着ている人もいれば、半袖の人もいる。要は、自分の体質に合った服装をしているというだけのことなので、他人のことには余り干渉しない。しかし、「リクルートルック」に代表される日本では、冬には冬の服装があり、真冬に半袖では白い目で見られそうで、汗をかいてでもコートを着るような馬鹿げた感覚があります。
ではなぜ、インドの人は我が信じる道を行くのか。恐らく、インド独立時から受け継いでいる、自主独立の精神が旺盛なのではないでしょうか。それは、先頭に立ってインドの独立を勝ち取ったマハトマ・ガンディーやネルー初代首相の行動様式に見て取れます。お二人が極めて多様性に富んだ国、インドを束ねるのに使った政治的プロパガンダが、「self-confidence(自信を持つこと)」と「self-respect(自身を大事にする-自尊心)」だったと言われています。これについては、次回触れさせていただきます。
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