ファミリービジネスの危うさ
先週末、インドはホーリー(ヒンドゥー教の春の祭り)だった。当日の午前中は身分に関係なく色水や色の付いた粉をかけ合い、春の訪れを祝う。この日を境に北部インドの気候はぐんぐん上がり、月が変わり4月になるとデリーでは日中40度の世界がやってくる。
ご多分にもれず、ソニア・ガンディー国民会議派総裁もお祝いをしたようだが、果たして政治の世界に春が訪れるのか、はなはだ疑問だ。
というのも、インド政治がファミリービジネスになりかけており、時代に沿った革新的な政治への転換が出来るか危ぶまれるからだ。何せインドの人にとって、ネルー・ガンディー家(王朝)の威光は物凄く、徳川将軍家の葵の御紋をもしのぐものがある。
その辺は、インドの政治史を紐解けば一目瞭然で、インド独立の父でもある初代首相のネルーに始まり、娘のインディラ、その息子のラジブと三代にわたり首相を務めている。そして、ラジブ・ガンディーが1991年に暗殺されると奥様のソニア・ガンディー(現与党第一等の国民会議派総裁)を担ぎ出そうとした。
さすがに、ソニア氏はイタリア生まれであることから首相になることを固辞しているが、しっかりと与党総裁の職に就き、首相は政治基盤のない経済学者のマンモハン・シン氏にやらせ、実権を握っている。そして次(の首相)は自分の息子(したがって故ラジブ・ガンディー元首相の息子でもある)に継がせようと、着々と準備を進めている。仮に思惑通りになったとすれば、同一家系から四代にわたり首相が出ることになる。
そんな話しは前代未聞だが、インドでは起こり得ることかもしれない。何せ、1年以内に迫った総選挙を勝ち抜き、国会議員であり続けないとただの人になってしまうから、取り巻き連中は手段を選ばずということになる。国益よりも選挙で勝つことが優先される。
しかし、ハーバード大学やケンブリッジ大学に通った30歳前半の好青年は、見るところ余り政治には向いていないのではないかと思わせる。その柔和な面立ちからは、余計なお世話だが、切った張ったのドロドロした政治の世界で生きていけるのかと心配してしまう。また、特別演説がうまいとは聞かないし、カリスマ性があるとも思われない。だが、地位が人を作るともいうので、首相になったら、それに相応しい行動力のあるリーダーになるかもしれない。しかし、そんな世襲的なリーダーの選び方で、11億を越えようという人口を抱え、その1/3が未だに貧困層であるインドを引っ張っていけるのか疑問だ。
21世紀はアジアの時代といわれるが、その牽引車の最右翼の一国が中国と並び高経済成長を続けているインドと言っても良い。ただし、持続的な経済成長を可能にするもしないも、一にかかって政治の意志次第だと思う。どこかの国など、政治の体たらくで世界からあきれられているが、そうならないためにもインド国民が、否、インド政治家がネルー・ガンディー王朝という呪縛から解き放たれる必要があるのではないかと思う。人口の半分が25歳以下というこれからの国を引っ張っていくのに、旧来の王朝支配でしか事が運べないというのでは寂しい限りだ。
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