インド復活へのシナリオ―インド国民が下した審判
1947年に独立を果たしたインドは1991年に経済破綻し、それまでの社会主義的混合経済とは真逆な経済自由化の道を選んだ。その後、それなりの経済発展を成し遂げるが、ここ数年経済は失速しその輝きを失いつつある。このままではインドの復活は望み薄だ。ではその根底にある問題とは何なのか。突き詰めていけば、木に竹を接いだような社会構造に立脚した政治・経済体制にあると言わざるを得ない。
従来のままの経済体制の土台の上に、マーケットオリエンテッドな自由主義経済の構築は馴染まない。労働法をはじめとした古色蒼然たる法律の下で、いかに経済自由化による経済発展を声高に叫んでみても、空しい。国民のためと言いながら、国民を愚弄し搾取する政治屋が跋扈している国の発展は望み薄だ。
ではそういったインドの政治・経済体制をいかに作り変えるのか。そのために必要なことは、独立以来インド社会が頼みにしてきたネルー・ガンディー家支配の呪縛から解き放たれることだ。では誰がそれをやるのか。インド国民そのものではないか。その証が今回の総選挙であった。
従来の延長線上にはインド国家の繁栄も、インド国民の生活水準の向上もあり得ない。独立以来インドを担ってきたと誰もが思って疑わなかった体制の衰退、劣化が現代インドの悲劇そのものだ。その悲劇を終らせるのはインド国民そのもの以外にはあり得なかった。特に、今回参政権を得た1億人以上に上る若者が、受け入れがたいほど腐敗したインド国家体制の再構築に乗り出したと見るのが正しい。その舵取りを任せられたのがインド人民党(BJP)だ。独立後のインドでは国民会議派以外で初めてとなる単独政党による下院議員の過半数獲得を果たした。そしてこれからのインドを一身に担ったのが新首相のナレンドラ・モディである。
インド国民の今回の選択が、劣化した国家の再構築を促すとすれば、インドの前途は洋々だ。インドを代表する日刊紙The Times of India の 開票当日(2014年5月16日)の一面見出しは“A NEW INDIA AWAKENS TODAY(今日、新生インドが目覚める)”となっていた。まさに「新生インド誕生の日」と言っても言い過ぎではないだろう。面前を覆っていた霧がサーっと晴れ、新たなインド史の幕が切って落とされようとしている。
聴力、視力、そして言葉を失った三重苦の身でありながら立派な人生を送ったヘレンケラーは「不可能なことは無い(Nothing’s Impossible)」と言っている。ただし、「初心が貫徹できれば」という条件付だが(We can do anything we want to do, if we stick to it long enough)。果たしてモディ新政権は初志貫徹が出来るのか、インド再生への鍵はその1点に尽きる。
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