2008.05.05

インド医療ツーリズム

4月下旬にバンガロールを訪問した。大型開発案件を見させてもらうのが目的だったが、その規模にびっくりした。数カ月後には新国際空港がオープンする予定だが、その国際空港から車で1時間半程度、市内からは20分程度で、市の中心を迂回する地域で開発が進んでいる。近い将来、メトロが目の前を走るという。

見させてもらった開発案件の一つは米国の会社がマスタープランを作成している。1,200戸を擁する高層アパート(日本でいうマンション)が建設される敷地内には大型ショッピングセンターを設け、人造湖を配置し、それに隣接してスポーツクラブが用意される。また、インターナショナルスクールの設置も計画されており、さらには200床の病院まで設置される計画だ。

病院といえば、最近は「医療ツーリズム(Medical tourism)」が脚光を浴びだしている。インドもご多分に漏れず、政府自ら「医療ツーリズム」推進の旗振りをしている。インド工業連盟(CII)の調べに拠れば、2005年度にインドを治療のために訪れた旅行者の数は15万人に上ったという。保険も含めたインドの医療関連マーケットは2012年までに、現在の222億ドル(約2.3兆円、GDPの5.2%)から500-690億ドル(約5.2兆円-7.1兆円、GDPの6.2%-8.5%)に拡大するという(WHO Bulletin of the World Health Organization,2007年3月.)。将来有望な市場だ。

訪印する患者のメリットは、米国と同等の医療措置が受けられ格安な点だ。例えば、インドで心臓バイパス手術を受けた場合の平均的な医療費は7000~1万ドルで、米国(10万~13万ドル)に比べ1割以下だ(NEWSWEEK 2008.3.5)。

というわけで、インドの私立病院の施設も素晴らしいものが続々出来ている。著名なものにアポログループが展開する病院があり、アポログループ全体で7千床を誇り、デリーのアポロ病院には560床ある。年間で診察する約20万人の患者の内、約6割の12万人が外国人とのこと。ちょうど私が駐在していた1990年代前半に同病院が建設されていたが(1996年開業)、真っ白な建物で、一見ホテルと見間違うくらい瀟洒な建物だった。

日本人は「インドで医療処置を?」と思うかもしれないが、その辺の認識も改める必要がある。米国で登録されている医者の数は約80万人。その内インド系がインターンや医学生も含めると6,7万人いるといわれている。日本医師会の会員数が約16.5万人だからその凄さが分かる。米国で仕上がった優秀な医者がインドに里帰りし、腕をふるっていると思えば、米国かインドか、などといった選択はなくなる。医療の世界でもフラット化(ボーダレス)が始まっているのだ。

開発中の物件(手前がアパートで、背後がモール。その右手にシェラトンホテルが入り、一寸離れて病院が建つ)

エスコート心臓病理研究センター(デリー)

モデルルームのキッチン(日本のものとそん色ない)

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