2007.08.13

インド人はなぜ急がないか

最近、バンコク乗り継ぎでデリーに入ったとき、隣の座席に年配のインド人紳士が座りました。インドネシアにいる孫に会ってきた帰りとのことでした。デリーに小さい企業を経営していると自己紹介してくれましたが、名前を聞いてそこそこ名の知れた企業のトップであることが分かりました。どちらからとも無く、ビジネスの話になり、インドのインフラ整備の遅れに話しが及んだとき、「そんなに急がなくてもいいと思いますよ。また生まれてくるのですから」とおっしゃいました。ああ、バラモン教に公認されている輪廻思想かと思いました。
「輪廻」という言葉が定着する前に用いられた語のひとつが<五火>で、その説は、五つの祭火になぞらえつつ、死んで荼毘に付された者は、一旦月に留まり、雨となって地上に帰還し、食物に吸収されて穀物などとなり、それを食べた男の精子となり、女の胎内に注ぎ込まれて胎児となり、かくしてまた誕生する、というものです。(平凡社「南アジアを知る事典」)

もしそういったことが信じられるのなら、そんなにあせって物事を進める必要も無いのか、と思いました。インド勤務中、物事の進みが遅くカリカリしていたとき、インドのビジネスリーダーにインドビジネスには忍耐が必要(doing business in India is a game of patience)と諭されました。なんか、セミの誕生みたいだなと思いました。交尾が終わったメスが枯れ木に産卵管を差し込んで産卵する。孵化した幼虫は土の中にもぐりこみ、3年から長いヤツでは10年以上も地下生活をした後で地上に出てくる。そして1カ月足らずでまた同じことを繰り返す。そんな短い地上生活のためになんと長い忍耐の地下生活の時を過ごすのか。

ビジネスも相手のあるもので、時間が掛かるものと思えば気が楽になりますね。そして、まず相手の立場の理解から入ることが重要なんですね。最初に時間を掛けてしっかりとした基礎(相互信頼)を築く。重要なことだと思います。

一覧に戻る

contact お問い合わせはこちら