インド人とクリケットとオリンピック
先週末、講演で広島に行ってきた。宿泊したホテルから広島市民球場や広島城が眼下に見えた。市民球場の左手には原爆ドームが見える。広島市民球場も現在の場所は今年が最後で、来年からは郊外に移るそうだ。
野球といえば、大本はインドの国技とも言えるクリケットだという説もある。そのクリケットに対するインド人の熱の入れ方は並大抵のものではない。私がインドに駐在していたときの経験だが、クリケットのワールドカップ中は仕事が手に付かず、インド戦が中継されているときなどは銀行も開店休業で、いつもなら交通渋滞になる道路も閑散としていた。そして今年から、IPL(インディア・プレミア・リーグ)が開始され、連日新聞紙上をにぎわせている。英国のサッカーを模倣したものだろうが、人気俳優や富豪実業家などがオーナーとなり、応援合戦も大変なものである。
そのインドがオリンピックではまったく様にならない。中国がメダル獲得数で世界一を狙う一方で、インドは精精数個のメダル獲得が関の山、ましてや金メダルなど思いもよらない。この辺はどこか旧宗主国のイギリスにも似通ったところがある。すなわち、「スポーツは飽くまでもスポーツとして娯しまれるべきであり、歪められた国家意識を無理に結びつけて、誤った国家観念の昂揚の手段として利用することは甚だしい邪道である。」(「自由と規律」-イギリスの学校生活-池田潔著、岩波新書)ということらしい。
この辺を理解しておかないと、インドは経済などの国力では中国と並び称されるようになり、人口にしても11億の民を抱えていながら、何でインド人はオリンピックでは活躍できないのか、との疑問に未来永劫回答が出せないことになる。すなわち、ためにする努力は余り好まれない、のではないか。自分なりに意味が見出せないことには、熱心にならない。「豚もおだてりゃ木に登る」というが、インド人はそう簡単には木に登らないのである。
したがって、インドで事業展開するときにも、インド人従業員との接し方に注意する必要がある。個人の目的意識をないがしろにして、一方的に会社の方針を押し付けたのでは木に登るどころか、横を向いてしまわれかねない。会社の方針と従業員個人の利害がどうマッチするのか、ネバー・ギブアップの精神で意思疎通(コミュニケーション)に努める必要がある。ニューデリーに赴任した当時、インド人経営者に言われたことがある。“Mr. Shimada, doing business in India is a game of patience!”(インドでビジネスをやることとは、忍耐のゲーム-我慢比べ-である)
言うのは簡単だが、実践となると・・・、かも知れないが、インド人も同じ人間であると思えば、多少は気が楽になる。肩に力を入れずに、気楽に、気長にやることではないか。
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