2008.07.06

びっくりする日本人−その2

「ごまかしといいかげんさとが天性の生き方であるこのインドの文化と国民性からして、高水準を追及することは不可能であるという考えがありました。しかし皆を信頼して最善を尽くすようにいえば、彼等も仕事への信念を持ち向上心をわかせるようになるのです。私は単に人並みと見做されていた人達が、遥かに水準を超える力を発揮するのを見てきました。

二流の仕事をよしとせずに最高水準に照準を定め、それを要求し、厳しくこれを追及することによって、これを手に入れることができるのです。」
−テルコ(現タタ・モーター)創設者故ムルガオカ−ル氏−
(Creation of Wealth, A Tata Story by Russi M. Lala)

バンガロール郊外にあるトヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)のトヨタ技術訓練学校(Toyota Technical Training Institute : TTTI)を見学させていただいた。中卒以上の若者から選抜された生徒さん達が真剣なまなざしで実地訓練を受けている。午前5時45分に起床し、まずヨガの訓練で精神修養をする。夕方までいろいろな授業を受け、その後は体力づくりのため各種スポーツに挑む。3年掛けて、精神的にも肉体的にも強靭なトヨタマンを作り出す。

同校では、技術(Skill)や知識(Knowledge)の単なる習得ではなく、人間性(Mind & Attitude)や健康維持増進(Health & physically fit)までを備えた全人的教育を行なっている。素晴らしかったのは数人一組でやる共同作業で、課題をクリヤーすると全員が一緒に「終わりました」といった言葉を大声で言っていたことだ。目を輝かせ、達成感を体全体で示す。その上、一日の日課が終わると、今日学んだことを英語で、事細かに図入りのレポートを書く。昨夏に開校したばかりで、今は第一期生(約60人)しかいないが、この夏には第二期生が加わる。

ムルガオカール氏の言を待つまでもなく、我々日本人が一般的に持つ従来のインド人の印象はモノづくりには不向きな人種といったものではなかったか。ところが、まだ固まっていない若者にはその前提が通じないように思えた。一心不乱に与えられた課題に取り組む若者を見て、彼らが第一線に出てきたとき、それに対抗する日本の若者人口は彼らの1/16程度だ。多勢に無勢は言わずもがなで、その上ハングリー精神旺盛のインド人若者の一人当たりの労働生産量の16倍を、今の日本の若者一人がいかにして生み出し得るのか。彼らにエールを送りたくなると共に、日本人として何か背筋の寒くなる思いをした。

7日から洞爺湖サミットが開催されるが、地球温暖化などの環境問題に取り組むとき、お互いの主張が相容れず問題の進展が必ずしも図れるとは思えない。その前に、一般的な相互理解が必要ではないか。そのための人的交流(特に若者)を進めるような対話があってほしい。10年後、20年後の地球を守るのは、洞爺湖に集まる各国首脳でないことだけは確かなのだから。

グループごと、課題に取り組む

教官からの直接指導

作業は真剣そのもの

まだあどけなさが残る生徒さん達
でも、その眼光は鋭い

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