つかぬ間のハネムーン?
しかし喝采を浴びたケジリワルのその後に、腑に落ちないことが続出している。庶民党躍進の背景には、2002年12月に成立した「情報自由法(Freedom of Information Act)と、昨年12月に成立した「腐敗防止法(ロクパル法)」の追い風があった。前者は国民の知る権利を保障するもので、全ての国家機関は行政情報の適切な保管と提供の義務を負い、後者は首相や閣僚、公人の汚職を監視する機関の設置を定めている。
まず疑問に思ったのは、32議席を獲得し第1党となったインド人民党(BJP)を差し置いて、スキャンダルだらけの国民会議派と手を組み政権を取ったことだ。実のところ、腐敗防止法成立に47年を要した最大の理由は、国民会議派などによる抵抗だったと思われる。自分たちに不都合なことを回避することで保身してきた政党と組んだことは結党時の趣旨に反する。次に、中央政府が閣議決定し、わざわざ国法で義務付けられていない国会承認まで得た外資による総合小売業の進出にも反対を表明した。その上、一定量まで水道水の無料化実施などのバラマキ政策も入ってきている。また、望まれれば、4-5月に予定されている総選挙への出馬も考慮するとのことだ。
焦点がぼけ始めている。腐敗防止によるインド国家の再構築という素晴らしく民意を反映した大義名分はどこにいってしまったのか。説明責任を回避した無責任政治や中央集権型独裁政治、自由裁量が幅を効かすあいまいな政策。これらを敢然と否定することで庶民の「反腐敗」への共感を得たのではなかったのか。国民会議派もうまく立ち回ったものだ。ケジリワルを抱き込むことで自党のダメージを極小化した。しかし、そういった即興的関係も、次期総選挙までではないかと思われる。
制度に関する研究でノーベル経済学賞(1993年)を受賞しているダグラス・ノース(米)は「支配者の独占利益を最大化する所有権構造と、取引コストを引き下げて経済成長を促す効率的な制度は、常にせめぎあいを続けてきた」(大野一郎『経済史の構造と変化』)とし、持続的な経済成長を阻む「二律背反」と論じている。果たしてケジリワルは経済成長を実現するために、二律背反のもう一方の当事者である国民会議派を取り込み、それを踏み台にして本来の目的を果たそうとしているのか。その回答は、今回の総選挙への向き合い方で明確になろう。
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