2014.07.28

「新生インド」の誕生

いよいよモディ政権がスタートした。一介の州首相が全国区の首相となるのは難しいのではと懸念する人たちもいたが、今やそういった声は聞かない。政権発足後の大型案件、国家予算案は無難なものだった。大向こうをうならせるような派手な提案は無く、一部の評論家からは物足りない予算との批評すら浴びた。それで良いのではないかと思った。もう大げさな立ち回りは必要ない、有言実行あるのみというのが結論だ。これからは地道に一歩一歩事を進めるだけだ。

手始めに閣僚の数を減らし、集約できる省は一つにまとめた。端的な例がゴエル(Piyush Goel)国務相だろう。彼の担当する省は電力、石炭と新・再生可能エネルギーだ。エネルギー部門を統括し、首相に直結する。インドにとってエネルギー問題の解消が外資導入、産業育成や雇用創出の必須事項であることは明白だ。ゴエル大臣の第一声は「中間の介在者を排せ。時間がかかるものは直接上(自分)に上げろ」だ。不必要に仲介役を多用した官僚は、その氏名を省の壁に張り出すとまで言明した。次は重要省に重鎮を配した。与党インド人民党(BJP)前総裁のラジナート・シンを内務相に起用し国内統治を任せ、元総裁のニティン・ガドカリを鉄道相に任命、すぐさま10年以上手付かずだった鉄道料金の値上げに踏み切った。彼の第一声は「成果を出せ。さもなければ首だ」。自から指示を出し動く。従わない者は外し、有言事項を実践する。それだけの人物を任命した。

財務相になったアルン・ジャイトリーは公営企業株の売却断行を明言した。前政権では掛け声だけで計画の半分も実現できなかったが、今政権が目標とする額(5,842.5億ルピー)の売却が実現すれば、それだけで財政赤字は1割以上削減でき、国内総生産(GDP)に占める財政赤字の比率も0.55ポイント改善する。

モディ首相は政敵だったウッタル・プラデッシュ州のムラヤム・シン・ヤダブ政権下で首席次官を務めたミシュラを自分の右腕となる首席秘書官に任命した。地縁血縁とは無関係な人物本位での抜擢である。そして大臣は午前9時までに着席し、執務を始めろと命じた。その際、トイレをはじめ身の回りの整理整頓に努め、仕事の効率化を図れと。進捗状況は自ら見て周り確認する。これが首相のやることかと思うようなことまで事細かに指示を出した。そこまでやる必要があるほどインドは疲弊していたと言える。モディが目指すのは普通に努力するインドだ。それが実現できれば、インドは大国になれる。まさに「新生インド」の誕生と言える。

さて、17年にわたりいろいろな形で発信してきました私の意見(視点)も今回をもって終了です。その間1本でもお読みくださいました皆様には心よりお礼申し上げます。私は引き続きインド・ウオッチャーとしてモディの今後を見守り、従来同様その時々の感想を書き続けてまいります。そちらは私のHP(http://www.ibcjpn.com)に掲載してまいりますので、是非お立ち寄りください。

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