2007.07.24

ルピー高と若者とモノづくり教育

今年に入ってインド・ルピーがドルに対して約10%値上がりしています。単純に言えば、インドの輸出業者がドルで代金を受け取った場合、そのドルをルピーに換金すると手取りが半年前より約1割少なくなり、中小輸出業者は収益悪化に苦しんでいるということです。そのため、インド政府は金利補助や税金の還付率引き上げなどの救済措置を講じています。緊急事態に対応するには、金利や税を使った手っ取り早い方法が有効なのでしょうが、それだけでは抜本的対策にはなりません。

日本も1985年9月22日のプラザ合意以降急激な円高に見舞われ、当時の1ドル250円近辺から約10年後の1995年4月19日には戦後の最高値である1ドル79.75円まで上昇しました。ドルで輸出した場合、円での手取り額が1/3以下になってしまったのです。その間、進む円高に備えるため日本の製造業は血のにじむような努力を重ね、今日でもその力は衰えていません。その点に関しては、インドの製造業が日本に見習う点は多いでしょう。

写真はデリーに隣接するハリアナ州の職業訓練所のもので、今年私自身が撮ったものです。10年とか、20年前のものではありません。施設や器材は老朽化しており、給料が安いということで先生の手当てもままなら無いということでした。

インドには1歳刻みで2千万人もの若者がいます。次代を担う若者たちの職業訓練所がこの体たらくで、はたしてインドは製造立国としての力を蓄えられるのでしょうか。インド政府は日本の中堅中小メーカーの企業誘致を声高に叫んでいます。はたして進出した日系企業が十分な人材を得られるか疑問です。

インドの製造業には、対処療法としての対策と、将来を見据えた抜本的対策が必要だと思います。インドの為政者や高級官僚などが「そんなことは十分分かっている」とおっしゃるなら、是非具体的にお分かりになっていることを実行してみせて欲しいものです。

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