一夜明けて-インド国家予算の受け止め方-
5月の総選挙でインド人民党(BJP)が地すべり的勝利により30年ぶりとなる単独政権を獲得、その余勢を駆った予算発表だったので、期待値は相当高かった。ジェイトリー財務相も相当気合が入って(緊張して)いたようだ。20年以上も予算発表を見てきたが、予算案説明中に頻繁に水を飲み、5分間の途中休憩を希望し、再開後は着席して予算案の説明をする(通常は立ったまま最後まで行う)、というような光景は見たことがない。チダンバラム前財務相などは約1時間半、立ったまま滔々と予算案をまくし立て、その間にジョークも交えるという、火の打ち所の無い仕振りだった。見方を変えれば、ジェイトリーは泥臭く、その分なんか親しみが涌き、中身を持った(マジでやろうとしている)予算案のような印象を残した。一方、チダンバラムの方は、あまりにも完璧なのでどこか胡散臭く、何かごまかしでもあるのではないかと思ってしまうほどだった。
印象的だったのが議場最前列の一番左隅に陣取ったモディ首相がまったく無表情で、微動だにせずジェイトリーの説明を聞いていたことだ。ジェイトリーが期待に応えるような数値を言うと、BJP議員などは机をたたいて賛意を表明、盛り上げていたが、モディは反応しなかった。勝手な解釈だが、「今発表したことは絶対やる」ということの確認を心の中で繰り返していたのではないか。例えば、産業界がここ何年も待ち焦がれている州税と中央税を統一し、税の簡素化を図る全国一律の物品サービス税(GST)の今年中の導入を図るという説明の時には、反対している州の首相を思い浮かべ、どのようにして説得するかのシミュレーションをしていたのではないか。いかに単独政権といえども、案件によっては州政府の協力が必要だ。そんなことを繰り返していれば、2時間半に及んだ予算案説明も、意外と短いものだったかもしれない。
5月16日の総選挙結果判明の日もそうだった。周りが浮かれているのを横目に、その日のうちに内閣府の主要人事に取り掛かり、翌朝五人の候補者をニューデリーにあるグジャラート州事務所に招き、その日のうちに自分(モディ)の右腕となる首席秘書官を決めている。事ほど左様にモディという男は用意周到な人物である。今回の予算案も目からうろこは無い、順当な項目が並んでいる。要は、残された8カ月でどこまでやり切れるかだろう。個々にはいろいろ注文を付けたくなるが、そんなことは些細なことだ。とにかく決めたことをやり切ってみて欲しい。騙し続けられた国民が、プライドを持って住める国にする必要がある。まさに、“Just do it!”の一言に尽きる。
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