舵を切ったBJP、まともな政治はいずこに
最大野党インド人民党(BJP)が動き出した。3月31日、ニューデリーで開催のBJP党大会で、グジャラート州のナレンドラ・モディ州首相がBJPの最高意思決定機関である中央議会委員会のメンバーに指名され、No.3の座を射止めた。モディの上には、二人の長老(既に政界から引退したバジパイ元首相と首相候補から外れているアドバニ)しかいない。つまり形式的にはNo.3だが、実質的なトップ(首相候補)とみてよい。国民に人気のあるモディを2014年5月に予定されている総選挙の顔に据えるのはすこぶる順当だ。
その上、政治力とビジネスに長けたモディには、諸外国の政治家も賛辞を惜しまない。2011年9月に出た米連邦議会調査局(CRS)の報告書では、「ナレンドラ・モディのグジャラート州統治がインドで最も優れている」と持ち上げた。またモディは有力誌TIMEの表紙を飾り、見出しには” MODI MEANS BUSINESS(モディとはビジネスの意味)”とまで書きたてられた。
その一方で、党内にはアドバニの庇護を受け権力を振るうスシマ・スワラジ(女性で野党下院議員団長)がいる。今回の党大会でも、モディ派対スワラジ派の党人事をめぐる攻防を名立たる各紙が書き立てた。またモディには、2002年同州で起こった宗派暴動(ムスリムとヒンドゥー教徒の衝突で千人以上の死者が出た)を看過した、もしくは積極的に関与したという疑念が解けていない。
諸外国は経済的な利害をベースにした行動も取り得ようが、インドの国民感情を考えたとき、大きな精神的苦痛となって残っている大虐殺の傷は癒えておらず、最終的にモディを受け入れられるかどうかは判然としない。BJPにとっても大きな決断を迫られる。モディ以外では政権奪取は叶わない。しかし、裏目に出たら惨敗だ。
贈収賄や権力闘争、腐敗に満ちたインド政治が、潜在力を活かしきれないインドを作り出している。政治家が恥ずかしげもなくのたまう「経済成長を取り戻し、貧困を削減する」ためには、なすべきことが山積している。それを忘れ政争に明け暮れるインド政治の体たらくは、国民にとって悲劇だ。
英国の著名な歴史家であるアーノルド・トインビーの大著「歴史の研究」によれば、挫折した文明の共通項は「自己決定能力の喪失」だという。今こそインドの政治に自己決定能力が問われている。持てる力を使わずに挫折するのか、それとも自分の意志で目覚め、変革を成し遂げられるのか。その見極めが今後のインドをどう評価するかの分岐点になろう。
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