今、シヴァ神が必要なわけ
9月中旬商用でインドにいた。時間ができたのでマルチ・スズキのバルガバ会長宅でいろいろお話を伺った。その際、同氏は語気を強めて「シン政権は機能不全だ。インド経済復活に向けた具体的施策が打てていない」と憤慨されていた。失速する経済を横目に、出てくるのは政官界の汚職スキャンダルや目を覆いたくなるようなレイプ事件などの社会問題。それに加えて来年5月に予定されている総選挙目当てのバラマキ政策。国を富ますどころか、窮地に陥れることばかりだ。こんなことではインド経済の復活など夢のまた夢。これほど現状否定をするバルガバ氏の口ぶりも珍しい。
1週間ほどの滞在期間中に話ができたのは主として中間層以上のビジネスマンだったので、ある程度偏った見方になっているかもしれないが、総じて言えば、「今は政権交代しかない」といったところだ。大きな理由は「葵のご紋(ネルー・ガンディー・ファミリー)」にすがり政治家として生き延びようとしている現状容認派の人たちと、賞味期限が既に切れている、すなわち「従来同様のやり方では新機軸-自らの未来-は打ち立てられない」との認識に至れないご本家の体たらくだ。祖先(ネルー初代首相)が導入した社会主義的混合経済の構造的欠陥に気づき、自由主義経済へと舵を切ったところまでは良かった。ところが、首は曲げても、胴体は従来同様の方向を向いていた。進退窮まっていると見るのが妥当だ。ではどうするか。方向転換できない胴体は切り捨てるしかない、というのが私の結論。
ではどこから代わりの胴体を持ってくるか。今なら疑問の余地なく、最大野党インド人民党(BJP)が次期首相候補として指名したモディ現グジャラート州首相だろう。しかしモディには2002年問題(グジャラート州で多数の死者を出したムスリムとヒンドゥー教徒の衝突時の州首相)に加え、他州のムスリムを掌握できるかという疑問が残る。その際、留意すべきは今回の総選挙時に新たに選挙権が付与される若者が約1億5,000万人出現する中で一方、ムスリムの総選挙権保有者は1億人強ということだ(2011年国勢調査)。新選挙人となる若者には最早「葵のご紋」は通じないし、ムスリムとの抗争も望まない。彼らが希求するのは職の確保(未来)と社会秩序の維持(安全な生活環境)で、現状を打破し、新たな明日を築くことだ。インド三大神(注)の1つ、破壊の神様シヴァの出現が待たれるわけだが、その破壊を導くものが次代を担う若者であるとすれば、機能不全に陥っている胴体を破壊しえたかどうかは、来年5月に判明しよう。そういった意味で、来年が時代の分水嶺となる年になる予感がする。
(注)インド三大神「ブラフマ(創造)、ヴィビシュヌ(繁栄・維持)、シヴァ(破壊)」
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