読み解けない、ビンラディン死後の国際政治
オバマ米大統領が公式発表したのだから、そうなの(ビンラディンは殺害された)のだろう。でも、私の知識を以ってしてはどうしても合点が行かないことが多々出てきてしまい戸惑っている。
今回の作戦が米軍による単独行動であった(らしい)ことと、ビンラディンが住んでいた場所がパキスタンの首都イスラマバードから車で1時間半程度と、そう離れていない地方都市アボタバードであったことで2度驚かされた。
国際テロ組織アルカイダの指導者殺害という大儀があれば、たとえ他国の領土であっても、(普通に国家が機能している)当該国の了解もなしに軍事作戦が是認されるのか。パキスタン側は、その軍事行動のため深夜にビンラディンを急襲したヘリコプター4機がパキスタンの北西部に位置するガジィ空軍基地(Ghazi Air Base)から飛び立ったとしている。
その上、アボタバードにはパキスタン軍関係者が多数住み、陸軍士官学校(カクール)もビンラディンの居宅からアイアンで軽く届く距離(100ヤード)にある。3月にはパキスタンの外交を仕切っているといわれるキヤニ陸軍参謀長が同校を訪れ「パキスタンはテロ組織に毅然として立ち向かっている」と見得を切ったそうで、どこまで本気でどこからが冗談なのか分からなくなる。
何が何でもかれら(パキスタン政府や軍のトップ)がそんなこと(ビンラディンが同地で居住していることを)知りませんでした、などということはあるまい。仮にもしそうだとしたら、パキスタンもコケにされたものだ。否、コケにされているのは米国かも。なぜなら、米国はこの10年余り、テロ対策としてパキスタンに年間10億ドル以上を供与してきているのである。その挙句が(パキスタン側は傍観の)米軍単独行動では示しが付かないだろう。
その伏線になるのかどうか分からないが、米軍行動開始1日前の4月30日(土)に中国(張志軍外務副大臣:Vice Foreign Minister Zhang Zhijun)とパキスタン(バシル外務次官:Foreign Secretary Salman Bashir)は、国際テロ組織との戦いとアフガニスタンにおける秩序と平和回復のため協力関係を一層深めるとの声明を出している。余りにも出来すぎだ。まさかパキスタンが米中を手玉にとっているとは思えないが、なかなかしたたかなところがある。
中国の思惑は、米軍がアフガンから撤退しパキスタンへの関与を削減する過程で、同地域にいかにして中国の影響力を波及させるかではないか。もしそうであるとすれば、大統領選挙が来年に迫っているオバマ大統領にしたら今回の成果を誇りつつアフガンやパキスタンから手を引きたいのであろうが、それはインドにとって大きな問題となって伸し掛かってこよう。
考えれば考えるほど複雑に絡み合う国際政治が奇奇怪怪で分からなくなってくる。本当はニャンてこともないほど単純なのかもしれないのだが。アーカイブ
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