日本の構造的継続不況とインドビジネスとの関係
今からちょうど10年前、プリンストン大学のポール・クルーグマン教授(2008年ノーベル経済学賞受賞)が日本のリセッションには構造的な要因があるといって指摘したのが、(1)貯蓄率の高さと、(2)高貯蓄率のもとで完全雇用を維持するための企業による高水準の設備投資の必要性(「恐慌の罠」中央公論新社)。この二つは技術革新による生産性の向上と、少子高齢化による投資拡大の余地が減少することで頓挫する。労働力人口が減少している国で、高い投資水準を維持するのは非常に難しいことだからだ。また、私のような団塊の世代が退職金を取り崩し始めると、貯蓄率が逓減しだす。そうなると、設備投資は減退せざるを得ない。この循環で日本は衰退することになる。
一方のインドはどうかというと、労働人口の伸びに比して、生産性の向上と貯蓄(資金力)がついてこられない。したがって、自力でやるのではなく、他人様の協力を得ようとなる。すなわち、技術と金を持ってきてくれと。それを支える人口増加はお手の物。雇用が増えれば貯蓄率は上がるし、自力での設備投資能力もついてくる。
ここで問題になるのが日本企業の思考回路だ。私がインドに赴任した1991年ごろケンタッキーフライドチキンがインドに進出した。バンガロールに出来た1号店は、インドの食文化を乱すという理由で右翼に襲撃され、焼き討ちの目にあっている。しかし、20年後の今、大都市のショッピングモールにあるケンタッキーの店に入れば、おじいちゃんが孫とうれしそうにフライドチキンを食べている。また、数年前だったと思うが、バレンタインデーのプレゼントを売る店が、[軟弱だ]とこれまた右翼から嫌がらせを受け、店を壊されている。しかし、今やそんな記事はどこにも出ない。何が言いたいのかというと、新興国への企業進出にはリスクは付き物だが、将来を見据えての投資やビジネスの機会があれば、そのリスクを乗り越えていく覚悟が必要ということだ。二番煎じを専門とする日本企業が、セカンドランナー(二番ではダメですか?)で甘んじていると、日本そのものが潰れる。
私のように棺桶に片足を突っ込んだ人間は、「それでも仕方ないか」ですむが、これからの若者はどうすればよいのか。クルーグマン教授は無能な政策運営者(大蔵省、現在の財務省)を糾弾するとともに、日本の与党自民党(当時)を、「ボスが操る政治マシーンの連合体のようなもの」と断じている。その中で活路を見出すには、ファーストランナーになり、合理的なリスクに果敢にチャレンジする気概を持つことだ。少なくとも若者にはそうあって欲しい。
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