“時給50円の重さ”へのメッセージ
2月、アンドラ・プラデシュ州の鉱山の坑道をもぐってきた。地下60メートルにある雲母の掘削現場はメガネが曇って見えなくなるくらいに湿度が高く、地面は水浸しで、足場は不安定だった。お世辞にも再びもぐってみたいなどといえたものではなかった。
地上に運び出した雲母はブロックのまま販売に回すものや加工するものに識別される。加工するものはミクロン単位で薄く剥がして形を整え、穴を開けたり、粉末状にしたりして工業用や化粧品用の原材料へと仕上げる。温度が低い一番快適な季節でも日本の初夏を思わせるほど汗ばむ。極暑期の体感温度は軽く摂氏40度は超えるだろう。そんな劣悪な環境で先進国などが使用する原料を製造する人たちの月給は、女性が5ドルで男性が6ドル。1日8時間労働で時給50円程度だ(1ドル80円換算)。
インドが産出する白雲母(Muscovite)の品質は世界最高。中国も買いに入っている。世界のビジネス環境が水平化する中で、遅かれ早かれインドの賃金も上昇してこよう。その一方で、希少価値のある高品質の鉱物への買い手も増え、競争が激化することも明らかだ。そうなる前に手を打っておく必要がある。
では具体的にどうするか。
今回訪れた鉱山地域には当たり前のように無電化地域が広がる。そこはまた、年間日照時間が300日を超える再生可能エネルギーの宝庫でもある。その上、無限に広がる原野は肥沃な土地には見えない。それにもかかわらず、必要な動力はディーゼルで賄っている。原油は1バレル100ドルを超え、インドが輸入する原油代金は国家予算の3分の1(約7,8兆円)相当額に上る。そこにイラン問題が更なる影を落とす。
インドの将来を見据えると、今そこにある鉱物を買い付けるだけではなく、その鉱物の掘り出しに従事する貧困層およびその社会への貢献も考えるべきだろう。日本の技術と資金を投じ、環境に配慮しつつ、かれらの日常生活向上に寄与する。長く険しい道かもしれないが、そうやって築き上げた信頼関係と絆は強固なものとなる。日本企業のプレゼンスを高めるには、上述のような明確な社会メッセージを打ち出していくことが必要だ。
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