インドの繊維産業と日本
先週、富山県繊維協会(小矢部市所在)の招きでインド関連の話をさせていただいた。若手経営者や幹部社員の勉強会のようなもので、六回シリーズの最後とのことであった。
富山県といえば日本を代表する繊維産業の集積地で、私がインド赴任前に勤務していた大阪船場地域には関連企業の出先もあり、その縁で本社の工場見学をさせていただいた記憶もある。その繊維と縁の深い土地からインドに転勤したのだが、よくよく調べてみると繊維産業はインドが日本の先輩に当たるようだ。特にインドでは染色技術の発見が早く、それを使った絣(かすり)や絞り、更紗などの日本への技術移転はインドからだったようだ。
ニューデリー勤務時代、一寸南下したところに(赤レンガ主体の街並みなためピンクシティーと称される)ジャイプル(ラジャスタン州都)周辺を訪れたが、そこでも染色工場を見せてもらったことがある。原料はもっぱら草花だったと思う。
また、インドは木綿の原産国で、明治の終わり頃の日本とインドとの貿易量は総貿易量の一割程度を占めていたが、その内の輸入量に占める綿花の割合は8割にも達しており、それで財を成したインド商人が沢山いたようで、船場界隈でも羽振りの良いインド人は戦前日本に渡ってきて、綿花貿易でしこたま富を得たインド人の末裔だった気がする。
そんな歴史のあるインドの繊維産業だが、日本では余りパッとしたところが無い。どうも日本人にとって、“Made in India”は(粗悪品といったイメージがあるのか)なかなか日本への進出が進まない。これが、細かいことには余りこだわらないアメリカを中心とした欧米諸国などでは事情が一変する。米国が輸入するデニムの製造元世界第2位はインドのラルバイ・グループが所有する“Arvind”というブランドである。さらに、インドを委託加工地として、米国のGAP、スウェーデンのH&Mや、スペインのZARAなど、名だたるところが活用している。
そして、ベネトンなどはインドの45都市に160店舗もの展開をしている。ニューデリーの郊外にインドの拠点があり、イタリアから来た技術者による指導で、適正価格で、品質の良いベネトン製品が生み出されている。最近ユニクロなどの日本企業のインド進出が新聞に載りだしたが、日印の繊維産業の交流はまだ緒に就いたばかりだ。
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