暮れて明ける、世界経済パラダイムシフトの意味
もう1昨年のことになってしまったが、私などは背筋が寒くなるどころの話ではない、恐怖に満ちた経験をした。順風満帆で日は昇るもので落ちるものではないくらいに思えた世界経済が、あっという間に崩れ落ちた。その落ち方は、秋の日のつるべ落としでもかなわないくらいの速度だった。インド経済も過去の栄光はいずこやら、6%台の経済成長にまで落ち込み、BRICsに代表される新興国市場の破竹の勢いも、最早これまでかと思われた。
それが一年経った現在では、当初騒がれたほど世界経済が疲弊したわけではなく、インド株式市況なども、既にリーマン・ショック以前の水準に戻り、一部ではここ一年くらいで史上最高値も狙えるとの観測も出るくらいだ。
それでは一年ほどで、奈落の底に落ちることなく、世界経済を持ち直させたものはなんだったのか。恐らく、1929年10月のアメリカの株価大暴落で始まった世界恐慌時代のアメリカが当時のアメリカではなくなり、その時一顧だされなかった国々が21世紀を担う新興国として勃興し、その間の通信技術等の高速の進歩で世界がいや応なしに結びついたためではないか。アメリカが起こした1930年代の世界恐慌の受け皿にはアメリカ自身でなるしかなかったが、今や世界でその困難を背負えるようになった。言い換えれば、21世紀は各国間の利害関係がそこまで密接に絡み合い、他国の経済危機と自国経済を分けて考えることが困難な時代に入ったと言えよう。
しかしながら、可処分所得の130%を消費に回し、「enjoy now, pay later(先楽後憂)」的なアメリカ経済の現状復帰はまず困難で、常識的には20-30%減の経済規模への回復がいいところか。その一方で、英国の経済学者ケインズが言っていた『アニマルスピリッツ(血気)』をまだまだ発揮できる市場を持つ新興国が、その分を埋めて余りある経済活動をすると考えると、世界経済のパラダイムシフトは必然と思えてくる。それら新興国(未成熟国)は、先進国(成熟国)の過去から多くを学び、結構うまく自国経済の運営をしている。ただそこで気を付けないといけないのは、パラダイムシフトの起こった経済圏でのビジネスが、過去の延長線上にはないということだ。心は、シュンペーターの言った『創造的破壊』でもあるし、ドラッカーの言った『企業目的は顧客創造』であるとも言える。『そこに市場があるのか』と問うのではなく、『そこで市場が創れるのか』と問うことにより、企業にとっての明ける21世紀があり、そのパラダイムシフトを生かしきることにつながるのではないか。
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