ビジネスの世界地図が変わるとき
数週間前だったと思うが、何かの雑誌に「インド洋が世界を変える」というタイトルの記事があった。地図を見れば分かるが、インド洋に面している国や、その周辺国を見てみるとなるほどと納得した。中東の原油産出国や資源国としての南アフリカ、オーストラリアがある。その一方、資源とは無縁だが、自由港や規制フリーによる知価創造で国力アップ著しいドバイやシンガポールがある。そして、地理的にその中心を占める国はと見ると、インドということになる。インド洋には面していないが、インドの上方には中国とロシアが鎮座している。
この辺を念頭に置き地図を作ってみた。別にインドで食っているからというわけではないが、確実に経済(ビジネス)の世界地図は変わりつつあると言えるのではないか。最近、それを象徴するような出来事が起きた。インドを代表するタタ財閥の自動車部門(タタ・モーターズ)による旧宗主国であった英国の代表的ブランド「ジャガー」と「ランドローバー」の買収である。植民地だった国による支配国ブランドの買収という図式で捉えがちだが、両ブランドの所有者は米国のフォードである。すなわち、「英国」の有名ブランドは一旦「米国」に移り、そしてインド洋の中心に位置する「インド」に渡された、ということになる。同買収に要する資金総額は30億ドル程度と見られており、日本の銀行2行(みずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行)が最大約8億ドルを融資するという(08年3月27日付日経)。
まさに、19世紀までの大英帝国のビジネスの世界が20世紀には米国に引き継がれ、それが今世紀(21世紀)には、中東なども含めたアジア(インド洋諸国)に移ろうとしている。1961年若くして米国の大統領になったケネディーは「たいまつは新しい世代に引き継がれた」と語った。同表現を借りれば「21世紀、ビジネスのたいまつは新興国に引き継がれる」と言えよう。
米国大手企業などもアジア(インド)シフトを鮮明にしている。例えば、ルーターの世界最大手でインターネット業界の雄であるシスコシステムズは昨年10月、インドのバンガロールに「グローバリゼーション・センター・イースト」を開設した。現在の人員900人を、2010年までに1万人規模に拡大するという。同社で「グローバリゼーション・センター・イースト」を担当するクリス・ホワイト副社長は「たった5時間のフライトで、中東のドバイから中国まで、世界の人口の70%をカバーできる。ここはシスコの新興国戦略の要になる第2の世界本社だ」と言い切る(日経ビジネス 2008年3月17日号)。
そんな記事を読みつつ、自分勝手な地図を描いてみて、首相は脳死状態などと皮肉られ、旧態依然として変われずにいる極東の小国はこれからどう生きていくのだろうかという素朴な疑問、否、恐怖に似たものを感じてしまった。
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