人材活用とその教育
先週9日に開催された日印経済委員会主催のインド・ビジネスセミナー「インド人材の活用と育成」でパネルディスカッションのモデレーターを務めさせてもらった。パネリストはインド工科大学ボンベイ校の学長ミスラ博士、日本ユニシス株式会社の佐伯常務と九州大学理事・副学長の柳原氏だった。
最近インドへの関心が高まっているということと、日本の少子高齢化から人材難、特にIT業界での人材不足などから興味をお持ちになった方が多かったのか、当日の参加者は200人を越えた。特にインドIIT(工科大学)の学長が話されるということで、インド人材活用の奥義が聞けるのではないかと期待して集まられた方も多かったのではないか。しかし結果から言ってしまえば、そんな「目からうろこ」なんてことはなく、かなりまともなことを一生懸命やっているという印象だった。
その辺を要約すれば、次のようなことになろうか。すなわち、情報技術(IT)と通信速度の飛躍的発展のため、世界が一つのコミュニティーになってしまったということだ。そういった世界で、一国の将来を形作るための背骨(バックボーン)を形成するためには、知識が縦横に伝達され、そして新たな知識を創造できる高度な学業が学べる研究施設(大学)が必要となる。そこでは教える人(教授)と教えられる人(学生)は時と場合によっては立場が変わり、学生に教授が学ぶということにもなるという。
そうして育った学生は、世界どこででも就業でき、異文化との交わりにも違和感を覚えないまでにならないといけない。そのために、大学は異文化教育にも意を注ぐ必要がある。その結果生まれたIT技術者などを企業は採用することになるので、企業そのものも異文化を受け入れ、諸外国の政策にも精通する必要がある。
ザット言えばこんな感じであるが、さてこれを我が国企業に当てはめてみるとどうなるだろうか。異文化交流をするには少なくとも英語で意思疎通が出来るようにならなければならないし、顔の色や食べ物、その国の歴史などに偏見や既成概念を持つこともタブーだ。すなわち、相手がどんな国の出身であろうが、あたかも自国民であるがごとく接する必要がある。我が国に、そんな教育をしている大学や企業があるのだろうか。
ミスラ教授はそういう環境を作っていくためにも日印の協力が必要と説く。その際、官(国家)に頼るのではなく、民(私企業の)のイニシアティブが重要とも協調した。ごもっともと思ったし、当日参加された方にもミスラ教授の主張に共鳴し、自らもイニシアティブを取る意志を持っていただけたら、とも思った。
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