経済(ビジネス)が政治を変える日
西ベンガル州=長期共産党政権州、グジャラート州=最大野党BJP(インド人民党)政権州、ハリヤナ州=与党国民会議派政権州。
ここで謎掛け。上記3州の州政権を担当する政党は全て違うが、共通するものは何?
答えは、政治イデオロギーとは一線を画し、外資誘致も含めた自州経済力の増進を図っていること。
バタチャリア西ベンガル州首相は、「(西ベンガルの)工業化が必要だ。しかし、それを実現するには社会主義では難しい。資本主義でないとできない(本年1月5日付PTI)」と発言すると、その発言を擁護して、同州の前首相でインド共産党左派【CPI(M)】の重鎮であるジョティ・バス氏は、「我が州を工業化する必要がある。現状では、社会主義の実現は困難だ」と言明した(同)。
同州では三菱化学が高純度テレフタル酸の製造を行なう400億円プロジェクトで成功している。また、話題を呼んでいるタタ・モーターズの「10万ルピー小型車(ナノ)」の工場用地も西ベンガル州で、同社が工場用地取得に際して州政府と交わした契約の内容が同州議会で明らかにされ、その内容が業界でも他に例のない好条件だったことが判明している。
グジャラート州のモディ首相は「“Made in India”を他国の誰が買うか(買ってもらえないだろう)。買ってもらえるようにするには簡単で、“Made in Japan”と同様な技術力をつけることだ」と言い、来日して日本企業の誘致活動を行なっている。
しかし今のところ、インドで一番裕福と言われる同州への日本企業の進出は数えるほどでしかない。
一方、ハリヤナ州への外国投資の7割は日系企業からのものと、日本企業誘致に自信満々なのは同州のフーダ首相だ。同州には日本企業のインド進出成功事例の代表格であるスズキとホンダの合弁会社がある。つい最近(5月27日)でも、インド三井物産が1,200億ルピーを投じてデリー首都圏地域に立ち上げるとしている工業団地用地の一部として、同州が1,200万m²を提供することを検討しているとの報道があったばかりだ(PTI通信)。
事ほど左様に、各州政府は政治の枠組みを超えて自州経済の拡充に熱心になってきている。背景には、毎年1千万人以上といわれる、増大する若年労働者への就業機会(雇用)の創出と税収増等による州財政の建て直しなど、自らの政治生命に直結した課題への取り組みがあるからだ。従来のような実績を伴わないプロパガンダ政治は通用しなくなったとも言える。言い換えれば、政治体制が作るビジネスの枠組みが崩れ、自州経済(ビジネス)のための政治の妥協(枠組み変革)がもたらされつつある。これが教えてくれることは、企業のインド進出に際しては、既成概念にとらわれることなく、自ら直接、進出予定州政府との突っ込んだ話し合いを持つ必要がある、ということではないか。
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