2008.02.12

民族意識の発露と衰退

都内デパートの売り場で

14日(木)はバレンタインデーだ。いろいろなところでチョコレートや関連商品の山を見る。そのいわれや、背景となる歴史などとは無関係にビジネスがまかり通る。「こんな習慣なくなればいい」とする人や、「日ごろの感謝の気持を表すのによい」とする人など、意見はまちまちだ。そんなバレンタインのチョコの交換が日本の歴史や文化にどんな影響を及ぼすか、などと議論する向きはいないだろう。

ところがこれがインドだと勝手が違ってくる。浮ついた西欧かぶれの商業主義は、古く良きインドの文化を壊してしまい、好ましいものではないとくる。そして、関連商品を扱っている商店などが妨害行為を受ける。90年代初めにケンタッキーフライドチキンの1号店がバンガロールに開店したときも同様に、右翼団体から襲撃を受け、やはりインドでは西洋風食文化は根付かないのかと思わせた。バレンタインの贈り物などに添えるカードもけしからぬと、カードを販売するお店も襲撃を受けた。

ところがどうだろうか。最近になって、インドの主要都市に次々と出現しているショッピングモールには、ケンタッキーフライドチキンやマクドナルドのお店が必ずといっていいほど出展しており、今や家族連れやカップルで大盛況である。91年の自由化したばかりの時の異文化に対するヒステリックな反応は徐々に影を潜めつつある。

また、今のところ、バレンタイン関連の物騒な報道も目にしていない。インドの人口11億人の半分が25歳以下という事実のなせる業か。彼らは、インド古来の文化を尊重しつつも、西洋文化の受け入れにアレルギーがない。はたまた、所得水準の向上に伴い、自分の生活を楽しむことで頭が一杯になり、いちいち異文化への民族意識発揚の必要も感じなくなったのか。

それから、60年代から米国シリコンバレーなどに流出していた頭脳がインドに還流しだしている。過去3年で6万人くらいのインド人が米国から帰国したとの報道があった。カリフォルニア大学バークレー校のサクセニアン教授は彼らを「アルゴノーツ(新たな冒険家)」と呼ぶ。ギリシャ神話に登場する勇者の意味で、インドに回帰するインドの頭脳をそうなぞらえた。これらの人たちは異文化に対する偏見は持ち合わせていないだろう。こうみてくると、変わらぬ(と思われている)インドが、確実に変化を遂げていることが分かる。

マルチ・スズキの第二工場のあるマネ サール近郊のマック(マネサール工業団地で働く日本人が食べに来てました)

いつものオフィス近くの花屋さんのバレンタインデーのディスプレイ

ビジネスでも、インドと付き合う機会が増えてきている。変わらぬインドのイメージと、変わりつつあるインドの現状とその変化を敏感に感じ取ったマーケティング戦略が必要とされる所以だ。[/caption]

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