2007.11.19

故ケネディ大統領の深謀遠慮―長期的国家戦略とは

ジョン・ケネス・ガルブレイス

信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)で混迷を深める最近の世界経済だが、なぜそれほどまでの深手を負う経済行為に警鐘が鳴らされなかったのか、とても理解に苦しむ。世界には名だたる慧眼な経済学者や実務家がいるのに。そんな先のことは分からない、と言われても、最後に馬鹿を見るのは微力な個人かと思うと、何かやりきれない気持ちが心に残る。そんな先のこと・・・、長期的展望・・・、深謀遠慮・・・、などと連想ゲームをやっていると、過去にはすごい人がいたことに気付かされる。

1980年代に起こったIT(情報技術)革命。その牽引車となったのがアメリカ西海岸のシリコンバレーに居た人達だ。その中でも、インド人IT人脈の果たした役割は大きく、シリコンバレーで起業した人の内1/3はインド人絡みだとも言われている。なぜそんなことが起こったのか。その背景に居たのが故ケネディー大統領ではなかったかと思う。同大統領は1961年、当時ハーバード大学の教授であったジョン・ケネス・ガルブレイスを説得し、10億ドルの資金を持たせてインド大使として送り込んでいる。

米国のやったことの一つに、インド工科大学(IIT)のサポートがある。インドは、米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)を模倣しIITを創ってみたのはいいが、資金と先生に事欠いていた。そういうインドを見て手助けしたのが米国だった。インド最難関の工科大学を出ても、当時のインドには彼らを満足させるような職場はそうは無かった。で、行き着くところは頭脳流出、行き先は米西海岸のシリコンバレーということになったのではないか。そういった形で、1960年台から80年にかけて蓄積されたインドや中国からの人的資源が大きく貢献するIT革命へとつながったのだと思う。

そういった見方が当たっているかどうかの検証は困難だが、インド人が大きな貢献をしたIT革命がシリコンバレーを中心にして起こった事実に相違はない。その日を予期してケネディー大統領が、ガルブレイスという「経済の巨人」をインドに送り込んだとしたら、物凄い長期的展望に立脚した国家戦略の展開であったと言える。後講釈だから何とでも言えるが、それでも、そういった結果をもたらしたことは絶賛に値する。無限の富を生み出す人的資源への投資、それも国籍に関係なく、国境を越えて行なう。日本に今必要なことも、そんな大胆なソフトパワー(人財)への国境を越えた投資ではないのか。

大統領執務室から語りかけるケネディ

一覧に戻る

contact お問い合わせはこちら