二つの実験と初心貫徹
2月10日に開票のあったデリー首都圏(州に相当)の地方議会選挙で与党・インド人民党(BJP)が大敗した。70議席のうち67議席を新興勢力である庶民党(AAP)が獲得、BJPはたったの3議席を確保したに過ぎない。長年政権を担ってきた国民会議派に至っては壊滅だ。
これを国民のBJP離れと見るとしたら一寸違うのではないか。インド一般庶民の切望するところは変わっていないし、未来永劫変わらないだろう。未来永劫と言ったのは、それ程絶望的な願望をインド国民が抱いているということだ。すなわち汚職撲滅と安定した就労機会の創出である。
インドで何らかの許認可を得ようとすると、申請書受理窓口にいる小童役人までもが手数料として小銭をせびる。払わないと書類が受理されない。そんな手数料など公式説明書には一切書いてない。しかし慣例とやらで、たかりの類がまかり通っている。そういったゆすり・たかり(Extortion)から大金が絡むスキャンダラスな汚職(Corruption)まで、日本人ならずとも当のインド人ですら辟易しているのが偽らざるところだ。そういった根性を誰がどうやって叩き直すのか。国民の意図は、全国区ではモディに、地方議会のモデルケースとして、中央政府お膝元のデリー首都圏でケジリワル(AAP総裁)に実験をさせる、ということではないか。
今回の選挙期間中ケジリワルは、飲料水すらままならないスラムを中心に遊説、徹底したどぶ板作戦をとった。モディが昨年5月、国政選挙で圧勝したときと同様だ。国民は、インドを代表する政治家が、自分で言ったことをどこまで実行するか、二人を競わせようとしているのではないか。したがって、BJPがデリー首都圏議会までも席巻してしまったのでは、独裁政権になりかねず、言ったことがないがしろにされかねない。また、その際には「実行できるか」ではなく、「実行するか」でないといけない。即ち、政治的意志の完遂が求められている。
モディ政権が誕生し9カ月ほど経ったが、最近のモディを見ていると、懸命になって政権を取りにいったときの面影が失われつつあるようにも思える。いっぱしの政治家と見做され、国際舞台での華やかな活動を行う過程で、よもや初心をお忘れになったのではありませんね、と念を押しておきたい。遅れてやってきた庶民党の圧勝は、国民による相互チェックシステムの導入であり、先行した者が約束したことの実行を求めている。単なる議員数獲得合戦のゲームに熱中することにうつつを抜かしていたら、4年後の総選挙で悪夢を見るのはBJPであることくらい、モディは理解しているとは思うのだが。
最近の記事
アーカイブ
- 2018年10月 (1)
- 2018年8月 (1)
- 2018年4月 (1)
- 2017年6月 (1)
- 2017年3月 (2)
- 2016年12月 (1)
- 2016年11月 (1)
- 2016年7月 (1)
- 2016年6月 (1)
- 2016年3月 (1)
- 2016年2月 (1)
- 2016年1月 (1)
- 2015年12月 (1)
- 2015年11月 (2)
- 2015年10月 (1)
- 2015年9月 (1)
- 2015年8月 (1)
- 2015年5月 (1)
- 2015年3月 (1)
- 2015年2月 (1)
- 2015年1月 (1)
- 2014年12月 (1)
- 2014年11月 (1)
- 2014年10月 (1)
- 2014年9月 (2)
- 2014年8月 (1)