ビハール州の禁酒措置は的外れ
ビハール州のニティシュ・クマール州首相は先月、州議会選挙で公約した州内での酒類の販売を2016年4月1日から禁止する方針を発表した。飲酒が家庭内暴力(DV)を増加させ、女性被害の温床になっているとの理由からだ。
しかし問題はそんな簡単な、禁酒すればDVが減少するようなものだろうか。予想されることは、劣悪な密造酒による貧しい人の健康被害増加や不法な酒類取引の増加によるアングラマネーの跋扈、贈収賄の増加などではないか。アメリカの禁酒法時代に何が起こったかを見れば議論の余地はない。もし、禁酒すればDVなどが無くなるのであれば、インド全土で実施するのが本来の取り組み方だ。ちなみに、モディ首相のお膝元のグジャラート州もドライステート(禁酒州)だが、同州最大の都市アーメダバードには公式酒類販売店が2店あり、許可書さえ持っていれば、一定量の酒は自由に買える。それ以上に買いたい人は隣のラジャスタン州で購入、自州(グジャラート州)に持ち込んでいるとのことだ。そのため、インド最大の酒類消費量州はグジャラートとまで言われている。要は公の場での飲酒はつつしむも、自宅などで楽しむ分にはお咎めなし、というシステムだ。
禁止によって収入源が断たれる酒税の穴埋めはどうするつもりだろうか。2014年度のビハール州酒税は概算で700億円強あったようだ。クマール州首相の考えるべきは、酒税の有効活用ではないか。700億円あったら相当思い切ったことが出来よう。すなわち、安酒を飲みDVをやらかす貧困層の男性労働力を、劣悪な道路などのインフラ改善工事に大量投入し、その労働対価として全うな賃金を払い、少しでも健全な家庭生活を営んでもらうような政策の導入である。月一人3,500ルピー(約7千円:注)を払っても、クマール州首相の任期5年間で毎年17万人近い雇用が作り出せる計算になる。そんなまとも政策をやると自分の懐が豊かにならない、というのなら別だが。
こういった小手先の政策導入で政権争いをしていたのでは、インドの抜本的改革、否インドの国そのものの根底からの創り替えはいつのことやら、になってしまう。モディ政権がやろうとしていることは、対症療法ではないインドの根本治療だと思っているのだが、それを草の根的に分かってもらえるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
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— Times of India (@timesofindia) 2015, 11月 27
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