内圧、外圧とモディ
モディに対する風当たりが強くなってきてモディ苦戦、と見える。しかしそうだろうか。今までもそうであったように、国民の現状に対する不満は、常に拡大する。特にインドのような新興国における社会インフラの遅れや、就労機会のなさは決定的だ。その辺の弊害を取り除くための政治活動が困難を極めることは火を見るより明らかだ。だからといって、国民に自粛を求めるのも至難の業だ。
社会改革の過程で、大規模ストが起きるのもやむを得ない。否、やってもらったほうが政治的には好都合だ。社会主義的労働者寄りの労働法をそのままにしておいて就労機会を増やし賃金を上げろという論理矛盾は、言って分かるものではない。押し競饅頭をしているうちに、収まるところに収めるのが政治だ。内圧を梃子にして、風向きを自分の方に引き寄せる。強風でも吹かない限り、淀んだ空気は動かない。
■労働組合による抗議集会の様子(9月2日、マハラシュトラ州ムンバイ)
Trade union strike in Mumbai. Photos by Kamlesh Pednekar pic.twitter.com/KPtLShoRED
— Business Standard (@bsindia) 2015, 9月 2
モディが政権を奪取した去年の5月、BJP党員の友人が「モディがやりたいと言っていることの30%でも出来たら、合格だ。なぜなら今は10%も出来ていないから」と言っていた。政治家が夢を語らず、大した努力もせずに出来るようなことのみ約束していたら、見向きもされないだろう。天下国家を論じつつ、地道に身近な問題から片付けていく。それをどうやって国民に分かってもらえるかだ。
インドの高級官僚から「外圧は非常に結構」と聞いたことがある。変なことを言う人だなと思ったが、当人に言わせれば「必要性は十分理解できていても、自分からリスクをとって制度改革に打って出る政治家は少ない。“対外的な関係からやらざるを得ない、さもないと、インドは世界から見放される”、という理由に責任を転嫁できれば、政治的に動く」ということらしい。
モディにとっても、プレゼンスが上がれば上がるほど、内外の風当たりは強くなる。そのときその風を自分にとってフォローの風として使えるか、アゲンストの風としてしまうかは当人の政治力だろう。与党BJP(インド人民党)が少数勢力である上院の議員選出を行う州議会選挙が次々と予定されている。フォローの風に乗れれば、2年後くらいには下院与党であるBJPを中心としたNDA(国民民主同盟)が上院でも過半数に届く勢力を持ち得る。そうなると4年後の総選挙でのモディの続投も確定的になる。
果たして風を取り込めるか、吹き飛ばされてしまうか、モディの政治的重さ(動き)が試されている。
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