トイレからビジネスと雇用創出へ
時間の経つのは早いものだ。モディは昨年5月の総選挙で圧勝し、その余勢を駆った8月15日の独立記念日にインド国民に向けて出したメッセージがクリーンインディアで、トイレを作ろうというものだった。このクリーンには汚職撲滅という意味も含まれており、ブラックマネーを表に出そうというものだった。
確かに成果は出ている。この1年で26万2千の学校に42万5千のトイレが設置された。その一方で、工業化のためのインフラ整備に欠かせない古色蒼然たる土地収用法や経済活動を容易にする全国統一税(GST=物品サービス税)の今夏季国会での成立は阻まれた。モディによる大改革を期待していた人たちからは失望の声が聞かれる。
当然のことだろう。下院で過半数を取ったとはいえ、上院では少数派だ。いざとなれば憲法で認められている伝家の宝刀「両院合同会議」(BJP主導のNDA=国民民主同盟が現時点では過半数を占める)で決着をつけることも可能だ。しかし無理押しするとこれから行われる地方選挙に影響が出かねない。経済成長も期待したほどの結果は見せていない。それもそのはず、ブラックマネーで潤っていた不動産取引などは、片手を縛られてしまったような状況で、身動きが取れないと聞く。インド国民がどっぷり浸ってしまっている長年の生活習慣(システム)を一挙に変えることは、さすがのモディを以ってしても不可能である。
そこで今年の独立記念日のスローガンは一寸目先を変えて「Start Up India, Stand Up India(創業し、立ち上がろう)とした。起業家を擁護し、雇用を創出しよう、というものだ。その一方で、農民など貧しいヒトへの支援を打ち出している。そのため、従来の農業省(Agriculture Ministry)を農業と農民の福利厚生省(Ministry of Agriculture and Farmer Welfare)と名称変えをした。
プロビジネスという印象をぬぐい、社会の底辺にいる人たちに光を当て、順次行われる州ごとの上院議員選挙と地方選挙を勝ち抜こうというものだ。このままの勢いを保てれば、1年半後くらいには上院でも過半を占めることも可能と見られる。モディは、ビジネス界に歓迎され、農民を中心とした貧しい人たちからの理解も得られる政治がいかに難しいものであるかを痛感しているのではないか。そのために選ばれたとしたら、これほどやりがいのあることはない。冬季国会を経て、来年2月開始の予算国会まで、モディがどのような手法で以って上記2法案の国会通過を目指すのか、まだ明確な道筋は見えていない。
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