ハード(日本)とソフト(インド)の融和は可能か?
前回と同じ9月2日の講演会「これからのインド」でモディ首相は「インドでモノづくりを(Come. Make in India)」と繰り返し述べ、「日本の勤勉さ、ハードウエアー技術とインドのソフトウエアー技術を組み合わせれば大きな奇跡を起こせる」と強調した。
果たしてそう簡単に事は運ぶのか、大いに疑問だ。世界を席巻した日本の電機機器メーカーが、今や世界で大苦戦を強いられている。インドに進出したソニーはインドでの生産を断念、隣国タイからの輸入品で巻き返しを図っている。「ハードとソフトの融和」、極めて魅力的な言葉だが言葉だけに酔っていては、何の実績も挙げられない。日印関係者が考えるべきことは、そういった融和を阻むものが何であるかを明確にし、具体的打開策を打ち出し、実践することではないか。
インドは多言語、多民族、複雑な身分制度など、どれを取ってみても日本の延長線上には無い。だからといって、それらを全て理解することなど至難の業だ。否、理解しようとすること事態が危険極まりない。「生兵法は大怪我の基」を実践し兼ねない。インドの友人に聞いてみても、それらに関する疑問に全て明確に答えられる人はいないのではないか、というのが一般的な回答だ。
ではどうするか。一つ一つ問題を列挙、その解決策を模索していくより方法は無いだろう。例えば、インドにおける労使協調は可能か。可能とするならその必要要件をつぶさに洗い出し、どうすればその必要要件を満たすことが出来るか、実施に向けた具体策を練る必要がある。そういった労使間の問題に加え、労働者の技術レベルや賃金格差、税制、人口構成から来るメリット・デメリット、ICT(情報通信技術)の活用、インドの人が良く口にする“Value for money(支払い金額に値する価値)” と言った場合にインドの人が求める品質と価格の相関関係など、多くの問題点を克服していく必要がある。
それら各種問題点の克服は可能と思うが、それらを意識せずにインドが提供してくれると想定した利点のみを前提にしたインドでのモノづくりは危うい。インド進出日系企業の数が千社強という現状はインドの潜在的成長力を考えた場合、あまりにも寂しい。「フグは食いたし、命は惜しし」といった状態の日系企業は多いだろうが、食べたければ現場に足を運び、毒の何たるかを自ら検証してみる必要がある(『こちら』の本の106-108頁)。
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