車などに火をつけ抗議する農民たち
車などに火をつけ抗議する農民たち

 インドに出張中だった今月上旬、ラジャスタン州境に近いインド中部マディヤプラデ州のマンドソール(Mandsaur)という場所で、で債務免除を要求する農民のデモと警察官がもみ合い、5人の農民が射殺された。モディ首相の推進する「インドでモノづくりを(Make in India)」と技術者養成(Skill India)はインドにとって必須事項だが、それ以上の難題は農業政策だ。就労人口の約半分が第一次産業に従事するが、創り出す冨は国民総生産(GDP)の15%程度と、その非効率さは目を覆わんばかりで、特に悲惨なのは零細農家。まさに日本流に言う「水のみ百姓」そのものだ。

 農業は非課税の恩典を受けているが、恩恵を享受しているのは富農で、零細農家にはその恩恵は及ばない。彼らは春先蒔く種を買うために借金をし、旱魃等による不作で返済が出来ないと多くの人が自らの命を絶つことになる。借金で種を買う農民はまだ良いが、自暴自棄になっている農民は、種を買うはずの借金で安い(危険な)酒を買い、自ら破滅の道を歩む。

 そこに付け込んだ政治家が農業債務の減免を政治公約とし、選挙に勝とうとする。インド最大の州であるウッタル・プラデッシュ(UP)州では、先の州議会選挙でインド人民党(BJP)が農業債務の免除を謳い大勝した。それは、税収等に裏づけされていないばら撒き政策であり、危険極まりない。

 モディ首相は国際格付け機関がインドのレーティングを「投資適格最下位」にしていることに不満を漏らすが、累積する農業債務を考えれば、文句も言えまい。大手格付け会社ムーディーズによれば、2016年の国と州の債務合計はGDPの67.5%に達し、その上農業債務の免除を行なえば国全体の債務は増える一方で、格付け上位への変更など望むべくもない。

 農業債務総額は9.5兆ルピー(約17兆円)といわれ、インド国家予算の半分くらいの額になる。この債務の免除を政治の具に使うことの国益への悪影響を考えれば、とてもまともな政策とは思えないし、農民救済の抜本的対策にはなっていない。

 インド政府は今年度(2017/4-2018/3)の予算案で「5年間で農民の所得倍増」を謳い、そのために農業分野へ1兆ルピーの融資枠を設け、60日間の利子免除を盛り込んだ。しかし具体策に乏しい。“Make in India”に農業部門を組み込み、国を挙げた農業事業の発展を考えないと、何時までも二流国の域を脱することは出来ない。

 

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