インド最大州であるウッタル・プラデッシュ(UP)州の州議会選挙の開票が迫っている。モディ首相の選挙区であるバラナシもUP州だ。インド人民党(BJP)は下院でこそ過半数を制しているが、上院では少数派だ。その上院245議席中31議席を有するのがUP州であることを考えれば、今回のUP州議会選挙の結果がBJPの死命を制する、と言っても過言ではない。

 その選挙情勢を報じた3月3日付The Economic Timesに依れば、今回のUP州議会選挙の立候補者653人の内17%が重罪となる刑事事件に関与しているとのこと。常識では考えられないが、インドの場合刑事事件で訴えられていようが、被疑者や被告人であっても有罪判決が下されない限り、選挙に立候補できるのだ。その上、インドの裁判は相当時間が掛かることから、犯罪を犯し訴えられても「俺の目の黒いうちには判決が出ないから大丈夫」とうそぶく輩も多いと聞く。

■モディ首相のUP州バラナシ遊説

 では何故それまでにも多くの犯罪政治家が輩出されるのか。その謎解きは以下の通りである。まず、それまで無犯罪だった政治家が当選を目指して地元の有力者に協力を頼む。大体こういった有力者には犯罪歴を持つ人物が多い。めでたく当選する過程で、政治家はそれなりの金品を助けてくれた地元の大物に手渡す。そのため政治家は官僚と結託し公的資金や贈賄に手を染める。以前、計画委員会副委員長(委員長は当時のマンモハン・シン首相)であったモンテックシン・アルワリヤは「インド国家予算の30%は使途不明だ」と公言している。このこと事態、まったく信じ難いことではある。

 政治家から金品をせしめた大物は、さて、と考える。政治家になればいとも簡単にカネを手に入れることが出来るのであれば、おれ自身が政治家になってしまえば事はもっと簡単だ、と。そして地元有力者として立候補、カネをばら撒き見事当選する。今度は彼自身が官僚等と結託し、横領、贈収賄を繰り返すことになる。それほどインドの政治には金が必要で、インドの総選挙で使われる金額は米国大統領選で使われる金額に匹敵するともいわれる。こうして典型的な悪循環、犯罪歴を持つ、または刑事事件に巻き込まれている政治家が量産されていくのだ。それに加担する官僚の汚職も後を立たない。良く使う言葉にコラプション(corruption:贈収賄、汚職)というのがあるが、マルチ・スズキのバルガバ会長に言わせると、高級官僚や大物政治家、財界人たちが行なうのがコラプションで、小童役人や警察官などの行なう賄賂請求はディストーション(distortion:おねだりや嫌がらせの類)と言うらしい。事ほど然様に腐ってしまっているインド社会を矯正しようとしているのがモディ首相なのだが、それはもぐら叩きのようで、何時果てるとも知れない気の遠くなるような戦いともいえる。

 

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