インド北部ハリアナ州ロータック地域を中心として先週末、低カーストへの優遇措置に不満を持つデモが暴徒化し軍隊が出動、鎮圧にあたった。その間十数名の死者と多数の負傷者が出ている。インドではこの種騒動はデジャビュ的に何度も繰り返し起こっている。

■暴徒により放火された建物


 私がインドに赴任する少し前(1990年11月)にも「貧民優遇政策」に反対した抗議が高まり、当時のV.P.シン政権が崩壊している。貧民救済を行うことで政権を維持しようとしたがそれが裏目に出て政権はつぶれた。その際の騒乱の中心地も北部インドだった。同騒乱中に死者は数百人に上り、貧民優遇策から外れる若者百人以上が将来を悲観し自殺したとの報道があった。ただし、シン政権の政策により現在では後進カースト(OBC)が27%、指定カースト・指定部族(SC&ST)が22.5%と、国家公務員や公営企業職員の約半数になる優先採用枠を持ち、それらに属さない人たちからは逆差別だとの根強い反論、不満もある。

 今回のストは優先採用枠に入らない集団(騒動を起こしたのは「ジャート(jat)」と呼ばれる農耕民カーストで、経済的には貧民とは見なされていない。ハリアナ州人口の約3割を占める)が起こしたもので、逆差別で被害をこうむっているから自分たち(ジャート)も優先枠が得られるカーストに格下げしろというもの。

 こういった要求はたびたび出されるが、インド最高裁は「社会的貧困層であることの判断はカーストによるものではなく、経済的困窮度によって判断されるべきもの」との姿勢をとっており、ジャートの要求が一律で受け入れられるものではないとしている。

 うがった見方かもしれないが、そしてインドのツイッターでもささやかれているが、今回の騒動を背後で操っているのは国民会議派ではないか。ハリアナ州前政権のフーダ首相(国民会議派)はジャートに属しており、どうもその周辺が今回の騒動を炊きつけ、煽っているようだ。2014年の総選挙で起こったモディ(現首相、BJP)ウエーブに乗って、5カ月後に行われたハリアナ州議会選挙でインド人民党(BJP)が勝ち、同州議会初のBJP政権が生まれた。そして来年5月はインド最大の人口を抱える北部ウッタル・プラデッシュ(UP)州議会選挙が予定されている。仮にUP州議会でも国民会議派連合(UPA)が負けることになると、上院で優位を保つ国民会議派の地盤が揺らぐことになりかねない。国民会議派には何が何でも上院の優勢は堅持する必要がある。そのため、あらゆる手段を講じてBJPの勢力拡大の阻止に努めるはずだ。BJPとて手をこまねいて勝負の行方を見守っているわけではないだろうが、小手先の対応はやらないほうがましだ。

 非生産的な農業や無様な物流改革を行い、そこで余った人員を如何にして工業化を進めたい産業界に組み込んでいくか。モディ首相が本気で「抜本的な社会変革」を目指しているなら、その具体策と財政的支援策、そしてそのための裏付けを明確にする必要がある。

 

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