2008.03.10

観光シーズンとインドの観光インフラ

世界遺産、タージマハールがヤムナ川の向こうに見える川辺で金目のものを漁るくず拾い。

先週末の東京は本格的な春の訪れを感じさせるような陽気だった。日本では各地で梅祭りが行なわれ、今月末と予想されている桜の開花を待ち、ゴールデンウイークに向けた本格的な観光シーズンになる。

ところがインド北部では既に本格的な夏が到来、報じられる日中の気温はデリーで既に摂氏30度を超えている。1月末デリーを訪れたときの温度はまだ、朝晩は5度くらいまで下がり、日中でも10度台とかなり寒く感じたものである。したがって、これから9月くらいまでは、インド北部、特に観光のゴールデン・トライアングル(黄金の三角形)といわれるデリー、アグラとジャイプールの観光は一寸きつい季節になる。

そのきつさに輪をかけるのが社会インフラの未整備だろう。インド政府は“Incredible India(素晴らしいインド)”と銘打ち、インドの観光事業促進を図っているが、世界レベルで見た観光の容易さではかなり劣後していると言わざるを得ない。

世界経済フォーラムは3月4日、2008年の旅行・観光競争力ランキングをまとめ発表した。世界130カ国・地域の観光政策や規制、安全や衛生面、陸と空の交通網、観光インフラ、そして文化遺産や自然など14項目を比べたものである。それによるとインドはちょうど真ん中の65位となっている。中国が62位だから、経済的には世界の注目を集める二国が、観光面では他の諸外国の後塵を拝していることになる。インドに関する論評では、かなりの数の世界遺産もあり、文化や自然面からの評価では13位と世界のトップクラスにランクされているが、馬鹿高いホテル代や規制の残るビジネス環境などがランクを下げてしまっている。

面白いことに、その辺はインド政府も自ら認めているようだ。インド観光省が先月発行した「インド観光の手引き」では、トイレはホテルなどのものを使い、食事も限定的な場所で取ることを推奨、飲み水にも気をつけてと、インドは外人観光客にはハードルの高い国と言わんばかりの手引きとなっている。つまり、一般インド人と外人観光客とは同列に扱えない、否、インド人と同じような観光は外人には適さないということのようだ。

普通のインドを見たいと訪れる人たちに、インド政府はどんなインドを見せたいと思っているのだろうか。そんな手引きを作る余裕があったら、ホテル以外のトイレが使え、規制を外して手ごろな価格のホテルを作らせ、水道水が飲めるようにし、自国民であろうがなかろうが、普通に旅行が出来るような国づくりを目指したらいいと思うのだが。あれだけの歴史的遺産や素晴らしい自然など、観光資源には事欠かないインドだが、それを生かし切る政治的意志が働いていないのは残念なことだ。

都内某所の小さなお寺の境内で咲いた梅。お寺の名は「真宗大谷派善慶寺」でした。

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