2009.02.15

バレンタインデーとインド文化

ニューデリーのコンノート・プレースでバラを買い求める若者達

2月14日前になると毎年、ヒンドゥー至上主義者の一団が男女間の愛の表現を公であからさまに行うのは「インド文化に相応しくない」として、カップルを攻撃したり、関連イベントの妨害などを行う。今年も例年通り、ヒンドゥー過激派からの(インド文化に相応しくない行動を取ったものへ制裁を加えるという)警告が出され、警察などは、ギフトショップや花屋さん、それに大学など人だかりの出来るような場所で、それなりの体制を敷いたようだ。

今日、インドの友人数人に聞いた限りでは、大きな混乱はなかったとのこと。ただし、都市部では平穏だったようだが、地方都市では多少のトラブルはあったようだ。当社が契約しているインドの通信社(PTI)の関連写真を見ても、これがインドかと私でもびっくりするようなものがある。私が1991年に赴任した頃など、バレンタインデーそのものが大して話題に上がらなかったような記憶がある。その後経済自由化とともに欧米文化が流入し、若者文化にかなりの変化が起こっている。これに眉をひそめているのが一部の年配者や国粋主義者の一団である。

インド古来の良き文化を継承するということに異議を挟むつもりは毛頭無いが、過激な人たちの行動は、「(自分たちの存在を誇示したい)ためにする行為」としか感じられない。ただ単に欧米文化を否定するだけでは、その活動に一般からの賛同を得ることは年を経れば経るだけ難しくなる。そういった(国粋主義的)活動は、内からのみだけではなく、外からの力により消滅させられていくのではないか。

2004年から06年の3年間で、インド人IT技術者約6万人が米国からインドに帰国したとの記録がある。カリフォルニア大バークレー校のサクセニアン教授は彼らを称して「アルゴノーツ(ギリシャ神話に出てくる勇者)の(本国)回帰」と呼んでいる。各人が何年間米国で生活したかは定かでないが、一度自由な空気を味わってしまったものが、その権利を手放すことはしないだろう。

1989年6月4日に起こった中国の天安門事件でも、海外に居る中国人や世界中のニュースメディアによって中国共産党の隠蔽工作が暴露されてしまった。フラット化する世界において、インドの若者文化も確実に変わりつつある。それとともに、ビジネスの世界も確実に変わる。「変わらぬインド」などといってその変化を見極める努力をしないと、インドでのビジネスも悲惨な結果を招くことになる。

ニュー・デリーの公園で語らうカップル

ムンバイのマリン・ドライブでラブラブのカップル

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