2012.05.28

インド経済の迷走と場当たり政治の再建

インド経済の迷走が続いている。リーマンショック後、経済立て直しのために金融緩和を行ったが、物価高を招くと今度は13回にわたる金利引き上げに走り、それが新興国期待の星インドの経済成長失速につながっている。そこでまた、金利引き下げへの回帰を図ったが、今度はルピー安とFII(海外機関投資家)のインドからの逃避(株安)を引き起こしている。恥の上塗りをするように、インド中央銀行(RBI)が打ち出したのが「輸出業者は保有外貨の半分を15日以内にルピーに替えろ(ドル売りによるルピー安救済)」という小手先の対症療法だ。

やるべきことは分かっているのに、金縛りにあったように体(政策)が動かない。最近では、外資に複数ブランドを認めた小売業の開放政策(国会承認は不要)を閣議決定したが、声(悪い意味での政治力)の大きい一部政治家の大ブーイングに合うと、経済界からの歓迎の声はどこ吹く風で、そそくさと閣議決定政策を棚上げしてしまった。そこには弱体化した現マンモハン・シン政権の末路が見て取れる。取って代わると期待していたラフル・ガンディー幹事長(ソニア・ガンディー国民会議派総裁の長男)は大衆政治家というエセ看板が見破られ、自身の選挙区もあり、インド最大の人口を抱えるウッタル・プラデシュ(UP)州も含めた地方選挙で大敗を喫し、2014年の総選挙で首相就任という、一族が描いていたシナリオはほぼ絶望的になった。

それでは最大野党のBJP(インド人民党)が政権に就けばそれで万々歳かというと、事はそれほど簡単ではない。BJPの根底に横たわるヒンドゥー至上主義という絶対的価値観からどう離脱し、国民をリードしていくことが出来るのか。現在最も国民的人気が高く、次期首相への至近距離に躍り出たモディ・グジャラート州首相にしても、同州で起きた2002年の暴動によるイスラム教徒大量虐殺に関与したとの疑惑で、アメリカは同氏への入国ビザの発給を拒んでいる。その辺を意識してか、同氏は近時イスラム教徒との宥和政策(宗教による政治色の排除)を心がけている。

インドが本当に貧困撲滅を目指したいのなら9%前後の経済成長は必要だ。その為には過去の遺恨を忘れ去り、インドの国情にあった経済・政治体制を確立する必要がある。乱暴なやり方かもしれないが、モディ州首相を次期インドの首相にする前提で、BJPにインドの進むべき長期戦略を策定させた上で国民の審判を仰ぐ(総選挙を実施する)のも一法かと思う。

写っているのは「アグちゃん」と「デリー君」です。兄弟なので、こんな感じに仲の良いときもあります。携帯では何故かピントが合いません。

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