2007.09.03

インド人と時間の観念

「インド人=時間にルーズ」という概念が、あたかも公式方程式のように語られています。その方程式が必ずしも正しくないことを、どこかで証明してやろうと思っていました。

ちょうど8月28日、ANA(全日空)のムンバイ便就航を記念したセミナーをやらせていただけることになり、これだと思い、インドからゲストを3名招きました。幸いにも、当日は200名以上の方にご参加いただき、結果として、私の実験の証人になっていただくことができました。

ゲストの1名は、「スズキのインド戦略」を書かれた、マルチ・ウドヨグ社の元社長のバルガバ氏で、後のお二人は法務と税務に造詣の深い弁護士でした。

セミナーの始まる前の打ち合わせで、事前にメールでお知らせしておいた3分計の砂時計を3人の前に置き、一人の自由にしゃべれる持ち時間は3分間を3回、すなわち、各回共この3分計の砂時計の砂が全て落ちたら、話の途中でもストップを掛けますから、と今度は面前で説明しました。

その上で、3名全員に3回(計9分)のトライヤルの時間を差し上げ、試運転をやっていただき、本番に臨みました。結果は全ての発言が3分±10秒から20秒で収まり、セミナーは予定したトピックスを全てこなし、時間通りに終了しました。インド人は時間にルーズ、という神話はもろくも崩れ去ったのです。

しかし、ここでご注意いただきたいのは、自然体で神話が突き崩されたのではなく、相手方にこちらの考えを十分に伝え、本気度を示し、事前の準備をきっちりやり、打ち合わせ通りを相手に強いるということです。インド人も特別な人種ではありません。なそうと思えば、なせるのだと思います。

なお、参考までにバルガバ氏の発言概要を載せておきますので、ご興味のある方は引き続きお読みください。非常に参考になると思います。また、本件に関し、バルガバ氏へのご質問がありましたら投稿ください(E-Mail ibc@ibcjpn.com)。可能な限り、ご本人にお聞きし、回答させていただきます。


『ANAセミナー バルガバ氏 発言要旨』 2007.08.28

1.インドを理解する(Understanding India)

  1. 人種、気候、言語、食べ物、宗教や行動様式の多様性を理解する。
  2. 議会制民主主義国家であり、中央政府と州政府における政治の重要性を理解する。
  3. 1991年、統制経済から市場経済に移り、外資の進出規制が大幅に緩和された。進出する際には、進出先(州や具体的な場所)の慎重な選定が重要。
  4. 高経済成長により巨大な市場が生み出されているが、消費者は価格に敏感であり、良いものを安く売ることを念頭に置くことが重要。
  5. インフラが不十分だが、その分投資機会には恵まれる。
  6. 他国の成功例が必ずしもインドで通用するとは思わないこと。
  7. インド人の倹約精神を理解し、アフターセールスや部品供給の充実を図ること。
  8. 現在は市場規模が小さいが、奢侈品のマーケットも拡大しつつある。

2.人的資源の活用(Human Resource Management)

  1. 生産性の高い労働集団を作り出し、可能な限りインド人管理者を活用することが成功への道。
  2. 政治的色彩を帯びた組合を組成されると最悪。そうならぬために労使の対話を十分に行い、特に経営者からの真摯な従業員へのアプローチが必要不可欠。
  3. 公平で透明度の高い人事制度を確立し、日本のシステムの良い点を取り入れて徹底すれば、高品質で高い生産性も得られる。政策はトップが作り、それを基にインド人幹部に人事面を任せる。
  4. 優秀なインド人は沢山いるが、欧米流の経営になじんだ人が多く、日本的経営には疎い。採用時に日本的経営も受け入れられる柔軟性のある人物かどうかの判断を慎重に行なうこと。
  5. 採用後の教育システムを充実し、日本的経営の良さを理解してもらう。そして、日本のトップがインド人幹部を信頼し、経営を任せるリスクを取るくらいの覚悟が必要。

3.インドでビジネスを確立するということ(Structuring Business in India)

  1. 91年の経済自由化で、インド人パートナーと組む必要もなくなった。J/Vはパートナー次第だが、良いパートナーにめぐり合えず、日本企業も含め、失敗するケースが多い。独資で進出、経営のプロを契約で雇う等の工夫をすればよい。
  2. 命令系統は一本化すること。分社化された集団企業は、高コスト体質につながり、経営に破綻をきたす。インドのトップにはそれなりの決定権を付与し、日本本社もそれを尊重すること。
  3. 日本から余り細かなことは言わず、人事管理は日本的経営を飲みこんだインド人幹部に任せる。販売やマーケティングも同様。購買部門も強化し、納入業者との絆を強め、彼らの生産性や品質の向上、コスト削減に助力すること。

(以上、文責はシマダです)

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