2014.12.24

二人のモディ

来日したアンドラ・プラデシュ州のナイドゥ州首相と面談(11月27日、帝国ホテルで)

来日したアンドラ・プラデシュ州のナイドゥ州首相と面談(11月27日、帝国ホテルで)

 モディ首相が誕生して早6カ月が経つ。そのモディが今年の5月16日、自党インド人民党(BJP)が総選挙に圧勝し、自身の首相就任が確実になったのを期して、大きく変わったような気がする。

 総選挙前は全国を飛び回り、民衆を煽りまくっていた。インドをひっくりかえしてしまうかと思われるほどのアジり様だった。それがどうだろう、首相就任を境に今までの義憤に駆られ、激高したようなしゃべり方から、説得調のしゃべりに変わっている。前者は腐敗したダメ国家を変えるためには国のトップになる必要があったために意図的にやったもので、後者はその任を遂行する者の責任の重さを感じながら話しているからではないか。

 首相就任前があまりにもド派手な行動であったため、一部には政治課題遂行速度の遅さを指摘する向きもあるが、それは当たっていない。ネックスト・バッターボックスではバットをブルンブルン振り回していたが、打席に入ると単打でつなぐ姿勢に変わっている。先週デリーでお会いしたマルチ・スズキのバルガバ会長も、「千里の道も一歩からで、モディ改革は結果を出せる」と仰っていた。

 公務員のモラル改革に始まり、身の回りの整理整頓から国の環境問題対策に話をつなげる。大きな話しをしておいて、身辺を見渡し、足元を固める。今までのインド政治になかった実利を求める確実な政策実行である。徐々に既成勢力の力は殺がれつつある。BJPは上院では少数政党だが、改選選挙が行われるたびに徐々に勢力を増している。州議会選挙においても同様だ。2016年には上院勢力も逆転しているだろう。

 インドの反対で進まなかった世界貿易機構(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)でも、米国との妥協案を成立させ、貿易円滑化協定の採択に持ち込んだ。産業界が待ち望んでいる税制改革でも長年懸案事項であったGST(全国統一消費税)の導入に目処をつけた。着実にやるべきことをこなしていけば、2,3年後のインドは大変貌を遂げているだろう。

 そのモディに似た人物がいる。アンドラ・プラデシュ(AP)州のナイドゥ州首相だ。11月末に来日された。AP州首相だった2000年にも一度来日しており、二度目となる。前回もお会いしたが、今回も個人的に話す機会を得た。パソコンを抱え、自ら米国に乗り込み自州を売り込んでいたので、当時インドのCEOと呼ばれていた。マイクロソフトのビルゲイツをくどき、同社をAP州の州都ハイデラバードに誘致したのも彼だ。そのAP州が分離され、テランガナ州が誕生し、ハイデラバードはテランガナ州に帰属することになった。ハイデラバードは今後10年間、AP州とテランガナ州の共同州都となるが、その間にAP州は新州都を建設する必要がある。今回の来日も、新州都建設に向けたインフラ整備をはじめ、各種プロジェクト推進のサポート企業誘致のためのものだ。ナイドゥ首相は「どんな要望でも、1週間で答えを出す」と明言した。モディ首相とは対照的に非常に静かな方だが、内に秘めた新都市建設への熱意はモディのインド改革の熱意にも劣らないものがある。

 プロビジネスな政治家がインドを変えようとしている。水が高いところから低いところに流れるように、一滴の水が大河になるように、今までと違った方向でのインド変革が始まっている。堕ちるところまで堕ちたインドが生まれ変われるか、二人のモディの政治・社会改革をフォローすることでその将来が見えてこよう。

 

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